第02話 アイツからの連絡から一夜明けて!
探偵事務所に依頼して、やっとアイツに辿り着いた。
アイツの姿を最後に見てから、24年もの月日が流れていた。
SMSで連絡が来てからというもの、いろいろな想いが巡って、よく眠れなかった。
届いたメールはどこか他人行儀な印象で、事務的な文面だった。
アイツと距離が離れてから32年が経過しているわけだから、当然と言えばそれまでだろう。
しかし、私の中でのアイツは、小学生で止まっている。
むしろ意識的に止めてしまっているのかも知れない。
それは、アイツが女の子から女性になっていく時間を共有できなかったことも残念で仕方がないのだが、何も行動に移せなかった自分の弱さが許せず、悔やんでも悔み切れない気持ちがそうさせているのだろう。
愛知と広島の物理的距離は400kmに過ぎない。
逢いに行こうと思えば逢えたし、電話で話しをすることもできたはずなのに。
勇気を出して、当たって砕ければ良かったのに。
「もしも」と思うたびに胸が締め付けられ、自己嫌悪に襲われる。それでもアイツと繋がりができたことが素直に嬉しかった。
歳を重ねてやっと「やらずに後悔するよりもやって後悔する」ことを選んだ私が
恥を忍んで探偵事務所に依頼したことは、私が初めて勇気を出して踏み出した証なのだから。
アイツからのメールに返信した後、なかなか眠りにつけなかった。
共有した時間を思い出したり、どんな返信が来るのだろうとメールが気になったり。
いつ眠りについたのかは分からないが、目が覚めたのは昼前のことだった。
スマホを手に取り、メールを確認したが、アイツからの返信はない。
私は待つ時間を楽しむことにした。
探偵事務所でお世話になった担当の女性と話がしたくなり、電話をかけた。
「昨日、連絡したかったんですよ」
と弾んだ声に、
「昨晩、アイツから連絡ありましたよ」
と返した。
聞いたところあいつは、山口の実家から車で5分のところに住んでいるらしい。
昨日、探偵の方からアイツのご両親に私の連作先が書かれた名刺を渡され、同窓会をやりたいという話を伝えてもらい、ご両親は快く直ぐにアイツに連絡してくれたそうだ。
連絡先を渡されたあいつは、直ぐに連絡してくれたことを知った。
担当者との会話は続く。
「結婚していたのは残念だったけど、繋がりが持てて良かったですね」
と私が思っているそのままを言われ、少し戸惑いながらも
「本当にありがとうございました」
と感謝の気持ちを伝えた。
今日は週に1度の通院日。経過報告をするために主治医の先生の診察を受ける。
アイツからの連絡を楽しみに待ちながら。
第03話 連絡を待っている時間!
依頼して良かった。
30年以上前に、離れ離れとなったアイツを探し出してくれた「さくら幸子探偵事務所」
閲覧ありがとうございました。
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中年独身男のお役立ち情報局
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