【初心者向け】
中国神話の世界へようこそ!
知っておきたい魅力的な神々の物語
中国神話は、数千年の歴史の中で育まれた非常に豊かで多様な物語の宝庫です。ギリシャ神話や北欧神話に比べると、日本では「西遊記」や「封神演義」などの物語を通じて断片的に知られていることが多いですが、その全体像は驚くほど壮大です。
本記事では、初心者の方でも中国神話の基本が理解できるよう、世界の始まりから主な神々、有名なエピソードまでを分かりやすく解説します。
中国神話って何?まずは基本を押さえよう
中国神話とは、世界の成り立ちや人間の起源を説明する創造神話や神々の物語を指します。ギリシャ神話や日本神話と同じように、古代中国の人々が世界をどう理解していたかを物語る貴重な文化遺産なんです。
中国神話の特徴は次の3つ
- 体系的な神話が少ない:実は中国神話は、ギリシャ神話のように統一された体系を持っていません。各地域や時代によって様々な異説が存在
- 歴史との融合:歴史上の人物が神として祀られるケースも多く、神話と歴史の境界が曖昧
- 道教・仏教との結びつき:後の時代に道教や仏教の影響を受けて、神々の体系が発展
中国神話を知るための必読書「山海経」
中国神話を学ぶなら、まず押さえておきたいのが『山海経(せんがいきょう)』という古典です。「山の経典」と「海の経典」という意味で、幻想的な動物や神々、地理が記録された驚異の書物。初心者でも読みやすい現代語訳や英訳もあるので、興味があればぜひチェックしてみてください。
天地創造の巨人「盤古(ばんこ)」
ここからは具体的な神々の物語に入りましょう。まずは天地を創った巨人・盤古からです。
盤古の物語
天と地がまだ分かれていない混沌(カオス)の時代、その中に盤古が生まれました。1万8千年もの長い時間をかけて、盤古は天と地を押し分けて世界を創造したんです。
そして驚くべきことに、盤古が死んだ後、その身体が世界の一部になりました。
- 息 → 風と雲に
- 声 → 雷に
- 左目 → 太陽に
- 右目 → 月に
- 手足と身体 → 山岳に
- 血液 → 川や海に
この「自分の身体が世界になる」というモチーフは、世界中の神話に見られるパターンです。
ちょっと面白い豆知識
実は盤古の神話は比較的新しく、おそらく三国時代以降に成立したと言われています。天地創造の神なのに「新しい」って、なんだか不思議ですね。それより古い神話では、次に紹介する女媧や伏羲が人類の始祖とされていました。
人類の母「女媧(じょか)」
人類を創造した女神・女媧です。蛇の身体を持つ美しい女神として描かれることが多いです。
女媧の物語
女媧は泥をこねて人間を創ったと言われています。最初は一人ひとり丁寧に作っていたのですが、だんだん面倒になって、縄に泥をつけて振り回して大量生産したとか。丁寧に作った人間が貴族になり、雑に作った人間が庶民になった話も。ちょっとブラックユーモアですね。
でも女媧の偉業はそれだけじゃありません。ある時、天に大きな穴が開いて世界が大混乱に。女媧は五色の石を溶かして天の穴を塞ぎ、世界を救いました。
文明の創始者「伏羲(ふっき)」
女媧とセットで語られることが多いのが伏羲です。多くの神話で、女媧と伏羲は兄妹または夫婦として登場します。
伏羲の物語
伏羲は文化的英雄として知られ、人類に多くの知恵を授けました。
- 文字の発明
- 音楽の創造
- 狩猟と漁撈の技術
- 家畜の飼育方法
- 八卦(易経の基礎)の創始
つまり、伏羲のおかげで人間は文明を持つことができました。女媧が「生みの親」なら、伏羲は「育ての親」とも言えるでしょう。
大洪水伝説
ある伝説では、大洪水によって人類が滅亡したとき、唯一生き残ったのが伏羲と女媧の兄妹だったそうです。二人は結婚して人類を再生させました。この「洪水後の兄妹婚」というモチーフは、世界中の神話に共通するテーマなんです。
中国文明の礎「三皇五帝(さんこうごてい)」
ここからは中国神話において超重要な三皇五帝について解説します!三皇五帝とは、夏王朝より前の伝説時代に中国を治めた偉大な帝王たちの総称です。神話と歴史の境界線上にいる存在で、中国文明の基礎を築いたとされています。
「三皇」とは誰?
実は「三皇」の定義は史書によって異なりますが、最も一般的なのは、
伏羲(ふっき):文明の創始者
女媧(じょか):または燧人氏(すいじんし・火を発見した神)
神農(しんのう):農業と医療の神
今回は特に重要な神農について詳しく見ていきましょう!
【三皇】農業と医療の神「神農(しんのう)」
炎帝神農とも呼ばれる神農は、人類に農業と医療をもたらした偉大な神様です。
農業の発明
- 鍬(くわ)や鋤(すき)などの農具を発明
- 穀物栽培の方法を人々に教えた
- 暦を作り、農耕のタイミングを示した
- 「神農」という名前は「神聖な農業の神」という意味
医療の始祖
- 自分の身体で草木を試食して薬効を調べた
- 何度も毒に当たっては薬草の力で回復したという伝説
- 中国最古の薬物書『神農本草経』に名を残す
- 一日に70回も毒に当たったという驚異的なエピソードも!
神農は「火徳を以て王となった」ことから炎帝とも呼ばれます。紀元前3245年頃に生まれたとされる太陽神でもあるんです。
【五帝】中国文明を発展させた五人の偉大な帝王
「五帝」は三皇の後に登場し、中国文明をさらに発展させた五人の帝王です。
- 黄帝(こうてい)
- 顓頊(せんぎょく)
- 帝嚳(ていこく)
- 堯(ぎょう)
- 舜(しゅん)
それぞれ詳しく見ていきましょう!
黄帝(こうてい):中華民族の共通祖先
黄帝は中華民族の始祖とされる最も重要な帝王です。姓は姫(き)または公孫、名は軒轅(けんえん)といいます。
蚩尤(しゆう)との伝説的な戦い
- 蚩尤は獣身で銅の頭に鉄の額を持つ恐るべき戦神
- 頭に角があり、四目六臂(4つの目と6本の腕)を持つとも
- 濃霧を起こして黄帝を苦しめたが、黄帝は指南車を発明して方位を測定し勝利
- 「涿鹿(たくろく)の戦い」は中国神話最大の戦争
文明の統一
- 炎帝神農氏に代わって中原を統一
- 諸侯の信望を集めて帝位に就く
- 中国全土の統一へと導いた
黄帝の時代に中国文明は飛躍的に発展し、春秋戦国時代の基礎が築かれました。
顓頊(せんぎょく):天地の秩序を確立
顓頊は黄帝の孫とされ、「絶地天通(ぜっちてんつう)」という重要な改革を行いました。
これは「天と地の交流を絶つ」という意味で、それまで自由に行き来できた天界と人間界を分離し、秩序を確立したとされています。神々と人間の関係を整理した、いわば「宇宙の法律」を作った帝王なんです。
帝嚳(ていこく):文化と制度の発展
帝嚳は顓頊の後を継ぎ、文化や制度をさらに発展させました。音楽や暦法の整備に貢献し、人々の生活を豊かにしたとされています。
堯(ぎょう):理想的な聖王
堯は最も理想的な君主として中国史上で讃えられる人物です。
- 謙虚で徳が高く、常に人々のことを第一に考えた
- 自分の息子ではなく、賢者の舜に帝位を譲った(禅譲)
- 大洪水の治水にも尽力した
堯の時代は「理想の時代」として後世の中国人の憧れとなりました。
舜(しゅん):孝行と徳の模範
舜は堯から帝位を譲られた、もう一人の理想的な君主です。
- 貧しい農民の出身だったが、その孝行と徳が堯の目に留まった
- 継母や異母兄弟から虐待されても、常に誠実に接した
- 堯は自分の二人の娘を舜に嫁がせて人格を試し、最終的に帝位を譲った
舜もまた自分の息子ではなく、治水の功績があった禹(う)に帝位を譲りました。この禹が後の夏王朝の創始者となります。
三皇五帝が示す中国文明の発展段階
三皇五帝の物語を時系列で見ると、中国文明の発展段階がよく分かります。
【三皇の時代】
🔥 基本的生存技術の獲得
- 火の使用(燧人氏)
- 人類の創造(女媧)
- 文字と八卦(伏羲)
- 農業と医療(神農)
【五帝の時代】
👑 社会制度と文化の発展
- 統一国家の形成(黄帝)
- 宇宙秩序の確立(顓頊)
- 文化制度の整備(帝嚳)
- 理想的な政治(堯・舜)
三皇五帝の物語は「人類がどのように文明を築いてきたか」を神話的に表現しています。
もっと知りたい!他の有名な神々
中国神話には、魅力的な神々がたくさんいます。
玉皇大帝(ぎょくこうたいてい)
玉皇大帝は、道教と民間信仰における天界の最高神です。天公とも呼ばれ、中華圏では最も広く信仰されている神の一人です。
ある伝説によると、玉皇大帝はもともと普通の仙人でした。3200回の試練を経て、それぞれ約300万年かけて修行を積み、最終的に天界の最高支配者として認められたとされています。
道教の最高神「三清」
道教では元始天尊、霊宝天尊、道徳天尊の三神が最高神とされ、総称して三清(さんせい)と呼ばれます。元始天尊は『老子』に説かれる「道」が神格化された存在です。
四方を守る「四神獣」:風水思想に由来する守護神
- 東の青龍(せいりゅう)
- 西の白虎(びゃっこ)
- 南の朱雀(すざく)
- 北の玄武(げんぶ)
これらは日本のアニメやゲームでもよく登場するので、見覚えがあるかもしれませんね!
みんな知ってる「孫悟空」
『西遊記』の主人公・孫悟空も中国神話の重要なキャラクターです。天界の軍隊を相手に一人で戦ったり、強敵の怪物を一撃で倒したりしてます。
なぜ中国神話は面白いのか
中国神話の魅力は、その多様性と柔軟性にあります。統一された体系がないからこそ、地域ごと、時代ごとに様々な異説が生まれ、それぞれが独特の魅力を持っているんです。
三皇五帝の物語は、神話でありながら人間的なんです。神農は自分の身体を張って薬草を試し、堯と舜は権力にしがみつかず賢者に帝位を譲る。完璧な神ではなく、苦労し、悩み、成長する。そんな人間臭さが共感を呼ぶんですね。
また、神話が歴史、哲学、宗教と深く結びついているのも特徴。三国志や『西遊記』といった歴史小説や物語を通じて、現代まで生き続けています。
中国神話の主な資料
中国神話は、特定の聖典にまとめられているわけではなく、様々な古典籍の中に散逸した形で伝えられています。そのため、複数の資料を読み解くことで、その全貌を理解することができます。ここでは、特に重要な四つの資料をご紹介します。
山海経(せんがいきょう)

『山海経』は、中国最古の地理書とされる書物で、奇妙な動植物、異形の神々、伝説上の国々など、幻想的な記述に満ちています。神話的な地理観や、各地に伝わる神話、伝説、民間信仰の要素が豊富に含まれており、中国神話研究において非常に重要な資料です。その内容は、現代のファンタジー作品にも大きな影響を与えています。
淮南子(えなんじ)

前漢時代に編纂された思想書であり、道家思想を基盤としながらも、儒家、法家など諸子百家の思想を統合したものです。盤古の開天闢地、女媧の補天、后羿の射日など、多くの重要な創世神話や英雄神話が体系的に記録されており、中国神話の形成過程を知る上で不可欠な文献です。
史記(しき)

前漢の司馬遷によって編纂された中国の正史であり、黄帝から漢の武帝までの歴史が記されています。歴史書であるため、神話的な記述は歴史的事実として整理・再構築されていますが、三皇五帝の伝説や、神話的な英雄たちの系譜など、中国神話の骨格を理解するための重要な情報源となっています。神話が歴史と結びつく中国神話の特性をよく示しています。
捜神記(そうじんき)

東晋時代に干宝によって編纂された志怪小説集です。神仙、妖怪、幽霊、不思議な出来事など、様々な怪異譚が収録されており、民間信仰や地方に伝わる神話、伝説の要素が豊富に記されています。体系的な神話というよりは、個々の不思議な物語を通じて、当時の人々の世界観や信仰を垣間見ることができます。
おすすめ書籍
ゼロからわかる中国神話・伝説
「人物とエピソード中心に、中国神話・道教・歴史英雄・妖怪までを一冊でざっくり俯瞰できる、ライトルな入門ガイド」です。

- 道教の神々、歴史上の英雄、『西遊記』『封神演義』などの物語に登場する人物を、キャラクター事典風に紹介する入門書です。
- 伏犠・女媧、三皇五帝などの創世神話から、関羽・岳飛のような神格化された武将、四神・麒麟・鳳凰・九尾狐などの霊獣・妖怪まで幅広く扱います。
- 構成は「中国神話とは?」「創世神話と道教の神々」「伝奇編」「歴史編」「霊獣・邪神・妖怪編」といった章立てで、ざっと全体像をつかむのに向いています。
中国神話・伝説人物図典
「神仙・妖怪などを一目でイメージしやすい肖像画付きで整理した、ビジュアル中心の人物・怪物図典」です。

- 神仙・妖怪・魑魅魍魎など、中国の神話世界に登場する人物像・異類を、肖像画とともにまとめた図鑑的な作品です。
- 西王母・東王公・八仙人から、鳳凰・九尾狐までを網羅し、視覚資料としても使える「歴史図像シリーズ」の一冊です。
中国の神話伝説 上
「開闢から堯舜・禹に至るまでの中国古代神話を、本格的に読み物としてたどれる学術寄りの解説書(シリーズ上巻)」です。

- 中国神話研究の大家・袁珂による体系的な神話叙述の上巻で、開闢神話から古代の主要神々・英雄の物語を、通史的にまとめています。
- 収録内容は、盤古・女媧・伏羲などの「開闢篇」、黄帝・炎帝・蚩尤などの「黄炎篇」、堯と舜の物語を扱う「堯舜篇」、羿・禹・鯀などの英雄譚「羿禹篇」などです。
列仙伝・神仙伝
「古代から伝わる仙人列伝をまとめて読める原典系テキストで、中国の“仙人”像や神仙思想を具体的なエピソードから学べる書」です。

- 古代中国の仙人伝記『列仙伝』『神仙伝』の完訳で、老子・彭祖・左慈・張道陵など、多数の仙人たちの逸話を収めた作品です。
- 不老不死・神通力といった神仙観が色濃く表れ、道教的な「仙」のイメージの源泉を知ることができます。
まとめ:中国神話の世界へ第一歩
【創世神話・三皇】
- 盤古:天地を創造した巨人
- 女媧:人類を創り、天の穴を塞いだ女神
- 伏羲:文明を授けた文化的英雄
- 神農(炎帝):農業と医療をもたらした神
【五帝】
- 黄帝:中華民族の始祖、蚩尤を倒した統一者
- 顓頊:天地の秩序を確立
- 帝嚳:文化と制度を発展
- 堯:理想的な聖王
- 舜:孝行と徳の模範
【その他】
- 玉皇大帝:天界の最高神
- 三清:道教の最高神
- 四神獣:四方を守護する霊獣
中国神話は一見複雑に見えますが、一つひとつの物語はとても人間的で共感できるものばかり。神々も完璧じゃなくて、時には手抜きしたり(女媧の人間大量生産!)、何度も毒に当たったり(神農の薬草実験!)、人間くさい一面を持っているのが魅力です。
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