第06話 アイツに電話する勇気!
今朝、探偵事務所から調査報告書が届いた。
アイツの実家は下関にあるらしく、アイツは実家のすぐ近くに住んでいるらしい。
探偵さんがアイツのお母さんに上手く接触してくれたようで、私の連絡先の書かれた名刺を快く受け取り、アイツに渡してくれたそうだ。家庭円満で、アイツはパートに出ているとのことが書かれていた。
残念ながら家庭環境などといった詳細を知ることができるはずもなく、アイツの写真もない。
そこまで踏み込むことを求めていたわけでは無いのだが。
アイツからのショートメールを受け取り、それに返信してから10日が経った。
探偵事務所からの調査報告書に目を通し、受領書とアンケートを返信した後、相談員の方からLINEが届いた。
「進捗あったら連絡くださいね」
このメッセージをみて、私はアイツに電話したいという気持ちになった。そう思うのと同時に緊張が襲ってきた。
葛藤もあった。
アイツは既婚女性で、家庭円満な生活を送っているのに、電話して良いものなのか?と。
何かと言い訳を持ち出し、逃げ道を作って行動に移せなかった自分には大きな後悔があった。
「もしあの時、想いを告げていれば...」
「もしあの時、声をかけていれば...」
必ずしも良い結果を得られるわけもなく、むしろフラれていただろうなと思いながらも結果を出す以前に行動できなかった自分を恥じ、なにより許せなかった。
そんな自分をこの歳になって変えようと決めた。
SNSでつながっている他の同級生にも同窓会を考えていることを伝えている。
アイツは同級生のひとり。
私にやましい考えは何ひとつない。
だから、電話しても良いのだと思うようにした。
緊張が込み上げてくる。
私はアイツと32年振りに会話するんだと。
心臓の鼓動が激しくなるのを感じながらスマホを手に取り、アイツのことを考えた。
私の連絡先にアイツは自分の携帯電話でメールを送ってくれたから、私はアイツの電話番号を知っている。
もし嫌なら連絡してこなかっただろうし、非通知で連絡することだってあり得る。
そう考えると私はアイツから嫌がられているわけでは無いと、自分に言い聞かせた。
パートに出ていて、家事もしなければならない既婚女性のアイツ。
5コールまで頑張ろうと決めた私。
遂にその時が来た。
私は、アイツに電話をした。
コール音を1回、2回と聞くたびに、緊張感が増していく。
5回目のコール音を聞き終えた後、私は電話を切った。
アイツは電話に出なかった。
アイツと会話できなかったことは残念であるはずなのに、私はアイツに電話することができたという達成感と高揚感があった。
私はこの歳になって、過去の自分を打ち破った。
アイツとは今後、どうなるのかわからない。
でも不思議と不安はない。
私はアイツからの連絡を待つ楽しみができたのだから。
第07話 私の夢の中でのアイツ!
依頼して良かった。
30年以上前に、離れ離れとなったアイツを探し出してくれた「さくら幸子探偵事務所」
閲覧ありがとうございました。
*****************
中年独身男のお役立ち情報局
Friends-Accept by 尾河吉満
*****************