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【小説】if ~もう少しだけアイツと一緒にいられたら~ 第13話

恋愛小説

【小説】if ~もう少しだけアイツと一緒にいられたら~ 第13話

 小学生の頃からあいつが好きな私。
 その気持ちに気付いていないであろうあいつ。
 中学校生活が始まって2ヶ月が経ち、一緒にいることが増えた。
 距離が縮まったようで、まだまだ遠い。

 中間テストを終え、テスト結果が出た。
 全生徒120名のうち、上位50名の名前が
貼り出される。
 「緒川、成績発表されたみたいじゃよ。見に行かん?」
 「もう出たん?」
 教室を出て、廊下に貼り出された結果を見に行った。
 「あった。俺、36位じゃぁ。」
 「ウチは32位じゃった。ウチの勝ちじゃね。」
 「俺の負けかぁー。」
 最初の中間テストは、あいつに負けたが、点差は10点。
 夏休み前の期末テストでは、逆転可能な範囲だった。
 「期末テストも勝負な。」
 「えぇよ。次も負けんけぇね。」

 

 中間テストが終わると、次は体育大会がある。
 クラスで、誰がどの競技をするか決めることになった。
 陸上部で短距離をやっているあいつと私は、100m走に選ばれた。
 そして、クラスの俊足が集まって競う、女子2名、男子2名の男女混合リレーにも選ばれた。
 あいつは2番走者、
あいつからバトンを受け取る私は3番走者だった。

 やっと身長が150cmを越え、足も速くなった私。
 「(あいつに良いところをみせたい)」
 そんな気持ちを胸に、部活動に励んだ。
 制服は夏服に変わり、暑い季節がやってくる。

 

 部活では相変わらず基礎トレーニングが多かったのだが、実践練習も始まった。
 先輩たちとは、体の大きさも経験も違い、とても太刀打ちできなかった。
 中学生の1年間の差は大きい。
 でも先輩や顧問の先生は期待してくれていた。
 「緒川は身長が伸びれば、どんどん速くなるじゃろうな。」
 陸上部の先輩は、優しい人が多く、部活動は楽しかった。

 「(もっと速く走りたい)」
 強い気持ちに押され、練習量を増やしていった。
 「あんま無理すんな。ケガするじゃろ。」
 先輩にブレーキをかけられ、同級生と同じメニューをこなした。
 「緒川、最近、張り切っとるのぉ。」
 「体育大会近いけぇ。」
 部室で着替えながら、同級生と会話した後、部室を出た。

 中間テストを終え、部活動が再開した1週間は、筋肉痛で辛かった。
 部室を出ると、伸びをしながら待っているあいつがいた。
 「最近、頑張っちょるね。」
 「体育大会あるけぇ、頑張らんと。」
 「ウチ、筋肉痛じゃよ。」
 「俺も。ひざ痛ぇー。」
 こんな会話をしながら、校門を出た。
 

 「足速くなったじゃろ。タイム伸びちょるね。」
 「50mは伸びとるんじゃけど、100mはまだまだじゃけぇ。」
 「ウチは100mのタイム良かったんよ。」
 あいつは100m走が速かった。
 小学6年生の時、私は僅差であいつに負けたことがあった。
 50m走で負けたことはないのだが、100m走は未だ互角だ。

 速く走れるようになりたい思いで陸上部に入部した私。
 女子の中で走るのが速かったあいつも陸上部に入部した。
 陸上でも勉強でも競い合う仲になった。
 今、一緒に下校しているのも、そのおかげだ。

 「ウチら、混合リレーに選ばれたじゃろぉ。」
 「おぅ、頑張らんとな。」
 「1番狙うんよ。陸上部二人もおるんじゃし。」
 「そうじゃね。でも野球部もサッカー部も速い奴多いけぇな。」
 「緒川、負けたらあかんよ。」

 

 あいつは、いつも明るい。
 他愛もない話も、友達のように楽しく話せる。
 ふたりで仲良く下校できるのは嬉しいことなのだが、周りの目が気になる。
 でも、あいつに、そんな素振りは見られない。
 私は、単なる同級生のひとりなのだろう。
 小学生の頃から、あいつのことが好きな私にとっては、複雑な気持ちだった。

 

 

 学校生活の話から、テレビや音楽、マンガの話など、話は尽きない。
 楽しく話をしながら、考えていることがあった。
 あいつの気持ちが分からないでいるのだが、誘ってくれるのはあいつの方だった。
 好きな人として意識している私は、奥手になっていて、それに照れ屋でもある。
 私の方から誘ったら、あいつはどう反応するだろうか?

 断られるかもしれない。
 そんな不安を抱えながら、あいつを誘うきっかけを探っていた。
 緊張が込み上げて来る。
 誘えずにいる私。
 あいつのアパートが近づく。
 そして、アパートの前まで着いてしまった。

 「じゃぁ、明日ね。」
 「おぅ。」
 きっかけはあったはずなのだが、誘えずにいる奥手な私。
 階段に向かおうとするあいつに、
 「あのさぁ、日曜って暇なん?」
 「ん?別に何もないんじゃけど。どっか行く?」
 「三原に遊びに行かん?どうじゃろ?」
 「えぇよ。」

 あいつの返事を聞いた後、緊張で心臓が飛び出しそうになった。
 「緒川に誘われるん、初めてじゃね。」
 あいつを見送ったあと、私は飛び上がって喜んだ。
 こんなにドキドキしたのは初めてだった。
 あとになって緊張がさらに高まり、体が震えた。

 

 体育大会に向けて、部活動に力を入れる私。
 週末には、あいつとふたりで遊びに行く。
 これはデート?
 今は、あいつを誘えたことで、胸がいっぱいだった。
 そして、週末を迎える。
 どんなデート?になるのか。
 それは次回で。

 

第14話はこちら↓

【小説】if ~もう少しだけアイツと一緒にいられたら~ 第14話
どの運動部でも、3年生は最後の大会に向けて、最後の追い込みをかけている時期。1年生のあいつと私は、大会には出られないものの、体育大会に向けて走り込んでいる。体育の授業でも、100m走とクラス対抗の男女混合リレーの練習で一緒だった。どれくらい走っただろうか?

 閲覧ありがとうございました。

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