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【小説】if ~もう少しだけアイツと一緒にいられたら~ 第10話

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【小説】if ~もう少しだけアイツと一緒にいられたら~ 第10話

 あいつから家に誘われた私。
 小学生の時も、放課後に一緒に遊んだことはあっても、家に行ったことはない。
 私の気持ちを分かっていないでだろうあいつと、一緒にいることが多くなった中学校生活。
 急いで帰宅し、昼飯を食べて、遊びに行く準備をする。
 中間テストも終わり、友達と遊ぶことを許してくれた母。
 家を出て、あいつのアパートに向かいながら思うこと。
 「おまえら、デートでもしてくれば。」
 先輩の冷やかしに照れる私をよそ眼に、平然としているあいつ。
 あいつって、もしかして...?
 変な期待をしながらも、あいつが私のことをどう思っているのか、気になって仕方なかった。

 あいつのアパートが近付くにつれて、緊張してきた。
 そして、あいつのアパートの前に着いた。
 緊張が込み上げてきて、心臓が張り裂けそうになった。
 ドアの前に立ち、チャイムを押すことに戸惑う私。
 思い切って、チャイムのボタンを押す。
 「はーい。」
 と声が聞こえて、あいつのお母さんが出た。
 「緒川君じゃね。ちょっと待って。恵梨奈ー、緒川君来たよー。」
 お母さんに呼ばれたあいつが玄関に出てきた。


 

 中学校に入ってから、あいつの私服姿を見る機会は減った。
 私服姿もいいなと想っているところに、
 「緒川、駄菓子屋行かん?」
 「ええよ。」
 あいつのアパートの近くに駄菓子屋がある。
 小学生の時に友達とよく行っていた。
 あいつと一緒に行ったことはないが、その駄菓子屋で放課後に会ったことはある。
 三菱の社宅を通り抜け、駄菓子屋に向かうあいつと私。

 駄菓子屋は、少ない小遣いの中学生にとっては、ありがたい存在だ。
 安くて、いろいろなお菓子が買える。
 お互い好きなものを買って、駄菓子屋近くの小さな公園で食べた。
 中間テストが終わり、まったりとした時間をあいつと過ごす。

 

 他愛もない話をしながら、駄菓子を食べる。
 幸運にも公園には誰もおらず、ふたりきりでいる。
 「小学生の時にみたいには、遊べんね。」
 「そりゃそうじゃろぉ。勉強も部活もあるけぇ。」
 小学生の時から、あいつのことが好きだった私。
 中学生となった今の方が、あいつと過ごす時間が増えた。

 小学生の頃と言えば、5年生の時にあいつにちょっかいを出していた。
 その当時の仲良し3人組はと言えば、ひとりは大阪に転校し、もう一人とクラスを別れて水泳部
 に入り、すっかり距離が出来ていた。
 間違いなく、あいつのことが好きだった仲良し3人組は、中学生になってバラバラになった。

 まさか、あいつと同じクラスで同じ陸上部に入り、距離が縮まるとは思っていなかった。
 ましてや、あいつとふたりきりで過ごすことなんて、想像できなかった。
 「うちでゲームしよっか。」
 初めて、あいつの家の中に入った。
 リビングに行くと、ゲーム機が置いてある。
 「ウチのお兄ちゃん、ゲーム好きなんよ。」
 あいつの兄貴は遊びに出かけていて、ふたりでゲームをすることなった。

 

 中学校に進学しても、まだまだ子供なあいつと私。
 あいつのお母さんから、ジュースとお菓子を出してもらい、
 「テストできたん?」
 「できたよ。勉強したけぇね。」
 「それなら、えぇけど。ふたりでよく勉強しよるん?」
 「しよるよ。得意科目を教えあよるんよ。」
 「今日はゲームで遊んでえぇけど、勉強もちゃんとするんよ。」
 親子の会話を聞きながら、一緒にやるゲームソフトを選ぶ。
 「緒川君、恵梨奈と仲良うしてやってね。」
 「はい。こちらこそッス。」

 スーパーマリオワールドやエフゼロ、がんばれゴエモンなど、ふたりで出来るゲーム
 で楽しんでいるところに、あいつの兄貴が帰ってきた。
 ふたりでゲームしている姿を見て、
 「恵梨奈、俺のセーブデータ消さんどけよ。」 
 「わかっとるよぉ。」
 会話が終わると、自分の部屋に閉じこもったあいつの兄貴。
 あいつと私のことをどう思ったのだろうか?
 どんな関係であれ、一緒には居づらい状況ではあるが。

 

 「来週から部活再開じゃね。」
 「おぅ、走り込みがきつくなるみたいじゃよ。」
 「そうなん?」
 「3年は最後の大会じゃけぇね。」
 「そうじゃね。」
 そんな会話をしながら、ゲームを進めていた。

 夕方になり、あいつのお母さんは夕食を作り始めていた。
 「友野、俺そろそろ帰るわぁ。」
 「夕方じゃもんね。」
 「じゃぁ、また学校でな。」
 「おばさん、お邪魔しましたぁ!」
 「緒川君、また遊びにきてぇね。」

 あいつに見送られながら、アパートを出た。
 あいつといっしょに遊ぶ仲になり、お母さんにも、すっかり覚えてもらった。
 どんどん距離が縮まっている。

 帰宅途中、有頂天になっていた私。
 来週から、部活も再開する。
 中間テストの結果も出てくる。
 あいつとの今後の関係にも、変な期待をしてしまう。

 楽しくなっていく中学生生活。
 来週からは教育実習も始まる。

 教育実習で来る大学生とは、どんな人だろうか?
 そこで起こる出来事とは?

 それは次回で。

 

第11話はこちら↓

【小説】if ~もう少しだけアイツと一緒にいられたら~ 第11話
月曜日の朝。中間テストが終わり、今日から部活が再開する。朝練に行くため、7時前に家を出た。いつものように、あいつのアパートの前を通り、学校に向かう。あいつとはタイミングが合わず、会うことはできなかったが、部活で会えるし、同じクラスだ。

 閲覧ありがとうございました。

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