【if】～もう少しだけアイツと一緒にいられたら～ 第9話
帰宅し、夕食を済ませた後、自分の部屋で勉強を始めた。
ゲームをやりたい気持ちを抑えつつ、アイツより上の順位を獲ろうと意気込んだ。
普段はほとんど勉強しない俺。
アイツとの図書館での勉強を思い出し、アイツを意識しながら、ひとり勉強を進める。
2時間ほど勉強した後、軽く走りたくなった俺は、家の外に出た。
柔軟体操してから、ゆっくりと走り出す。
日中は暑くなってきても、夜は涼しい。
風を感じながら、次第に速くなっていくランニング。
アイツのアパートの横を通り過ぎ、三原二中のグラウンドまで走った。
短距離ダッシュ10本、筋トレをこなしてから帰宅した。
中学生活最初の中間テストが迫って来る。
科目は国語、数学、英語、理科、社会の5科目。
同学年は120人。
「（何位くらいになるかな？）」
そんなことを考えながら、テスト週間は過ぎていく。
アイツとは同じクラスではあっても、テスト週間中で部活動が禁止、話すきっかけがなかった。
「（今日のアイツもやっぱ良いなぁ。）」
遠目でアイツを見ながら、そう思った。
授業も終わり、帰りの会で担任の先生から、
「明日は中間テストが始まるけぇー、早く帰るように」
と告げられ、下校となった。
帰り際に男友達数人と、
「勉強しとるん？」
「全然してないんよ。」
と、よくあるやりとりをした後、帰る準備をした。
クラスメイトが教室からどんどん出ていく。
気付けば、アイツはもう居なかった。
「（今日は全然、話しできなかったなぁ）」
そう思いながら、俺も帰宅して勉強しようと教室を出た。
すると、アイツは廊下にいた。
「明日はテストじゃろ。またマンガ読みに行くん？」
「今日は帰って勉強するんよ。友野は帰らんの？」
「帰るよ。」
こんな会話をしているところをクラスメイトに見られるのは気まずい。
アイツのことは、ほかの男子も見ている。
そして、女子もコソコソ話をしているのが分かる。
「もう帰るけぇ。」
そう言って、ひとりで下駄箱に向かおうとする俺の横を、アイツはついてくる。
一緒に下校する流れではあるものの、校門を出るまで会話のないアイツと俺。
「問題出し合いながら帰らん？」
俺は、アイツに話しかけた。
「えぇよ。じゃぁ、ウチからな」
アイツのアパートに着くまで、問題を出し合いながら、下校した。
そして、テスト当日。
緊張のせいか、少しお腹が痛かった。
いつもより早めに家を出て、登校した。
国道2号線沿いの商店街辺りで、アイツを見掛けた。
少しずつアイツに近づきながら、
「友野じゃん。オッス！」
「あ、緒川。おはよう。今日は早いんじゃね。」
「おぅ、テストじゃけぇ。」
そんな会話をしながら、一緒に登校することになった。
教室に入り、教科書を読み返しながら、最後の確認をした。
朝の会も終わり、遂に中間テストが始まる。
朝からの腹痛も治まり、テストに集中できた。
まぁまぁの感触だった。
ようやく終わった中間テストからの解放感。
私は、早く部活動がしたかった。
「テストできたん？」
「まぁまぁできたよ。友野は？」
「できたよ。緒川には負けられんし。」
「それより、今日部活あるん？」
「知らんけど、部室行くん？」
「おぅ、なんか走りたいんよ。」
「うちも行こうかな。」
アイツも部活が好きなようだ。
一緒に部室に向かうアイツと俺。
途中、陸上部の先輩に会った。
「おぃ、お前ら。今日は部活ないぞ。」
「え、部活ないんスか？」
「テスト終わったばっかりじゃろ。来週からまた走り込みじゃ。」
「はい！なんか走りたかったんじゃけど。」
「来週からな。おまえら、デートでもしてきたらえぇじゃろ？」
先輩に言われて、顔を赤くする俺と違い、アイツは平然としている。
「おまえら、付きおうとるんじゃろ？」
「いやぁ、あの．．．。」
付き合っているわけではないのだが、答えに詰まった。
恋心があるのは俺の方で、アイツの気持ちは分からない。
「緒川、顔赤くない？」
「んなことないじゃろ。部活ないんかぁ。」
話題を部活に逸らして、残念そうに下校することになった。
「緒川、帰って何するん？」
「ゲームかな？テスト期間中はゲーム禁止じゃったけぇ。」
「うちのお兄ちゃんもゲームようやっとるよ。ウチもやっとるし。」
アイツには、2学年上の兄貴がいる。
「そうなん？何やってるん？」
「スーパーファミコンとゲームボーイじゃよ。」
「俺も両方もっとるよ。」
相変わらず、友達同士の会話が進む中、
「昼から、うちに遊びに来ん？」
「えっ？」
さすがにこの展開には驚いた。
アイツ的には、私はただの友達に過ぎないのだろう。
俺にとっては、好きな人。
アイツに誘われて、嬉しくないわけがない。
返事に困っている俺を余所に、
「服着替えたら、遊びに来てえぇよ。」
「じゃぁ、行くけぇ。」
照れくさくて、それ以来、無言になる俺。
「何、照れとるん？」
「照れとらんよ。」
照れながら答える俺に、
「なんか、エッチなこと考えとらん？」
「えっ、考えとらんよ！」
「最近、緒川ってスケベじゃけぇー。」
「何言っとるん？そんなことないじゃろぉ」
「ウチの胸、見とったじゃろ。」
「・・・。」
「胸見られたら分かるんよ。」
「・・・、見とらんし。」
アイツのアパートの前に着くと、
「じゃぁ、後でね。」
「ホンマ、行ってえぇの？」
「えぇよ。お母さんとお兄ちゃんがおるけぇーね。」
アイツと別れ、自宅に急ぐ俺。
まさか、アイツの家に誘われることになるとは。
一体どんな展開が待っているのやら。
それは次回で。
第10話
閲覧ありがとうございました。
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