【小説】if ~もう少しだけアイツと一緒にいられたら~ 第5話
いつもより早く目が覚めた朝。
カーテンを開け、良い天気にテンションはさらに上がる。
一階に降りると、両親と妹がリビングにいた。
「もう起きたん?珍しい。」
「今日は図書館で勉強じゃけぇー。」
あいつとふたりで図書館に行くことは、内緒だ。
食事を済めせ、出かける準備をする頃には、嬉しさが顔からこぼれそうになる。
家族に悟られまいと、必死に平然を装った。
ショルダーバックを肩にかけ、家を出た。
シャッターを開け、車庫から自転車を気を付けて出した。
車庫の中には、母親と妹の自転車、そして親父が大事にしているスカイラインが置いてある。
親父にとって初めての新車で、R32のGTS-4は親父の宝物だ。
以前、車に自転車を倒して、ひどく叱られたことがある。
シャッターを閉めた後、自転車のかごにショルダーバックを入れ、あいつのアパートに向かう。
私の自転車は、昨年亡くなった従弟のお古で、ハンドルがカマキリのタイプだ。
両腕をハンドルに乗せ、格好つけながら、自転車を走らせた。
そして、あいつのアパートに着いた。
あいつが住んでいるのは、アパートの2階。
道路から眺めながら、あいつが出てくるのを待った。
あいつの部屋のチャイムを鳴らして、呼ぶのはかなり勇気がいる。
白々しく自転車のベルを鳴らして、あいつに気付いてもらおうとした。
すると、あいつのお母さんがアパートが出てきた。
あいつのお母さんのことは、小学生の頃からPTAなどで知っていた。
少し気まずそうにしていると、
「緒川君?」
「あっ、はい。こんにちは。」
「恵梨奈ならもうすぐ出てくるけぇね。」
「はい...。」
あいつのお母さんが私のことを知っていることに驚きながら、あいつのことを待った。
ゴミ出しを終えて戻ってきたあいつのお母さんに、
「陸上部で一緒なんじゃろぉ。小学生の時から、恵梨奈からよく聞いとるよぉ。」
「なんて言われとんじゃろぉ。」
「よくちょっかい掛けてきよるって、言うっとったよぉー。」
照れくさくて、笑うしかできない私。
あいつが出てきた。
「あ、緒川。早いじゃん。」
「おぅ。」
お母さんの前で、あいつに馴れ馴れしくするのは恥ずかしい。
「じゃぁ、行ってくるけぇね。」
お母さんにそう言うと、あいつと一緒に自転車置き場に向かう。
あいつの自転車は、ハンドルがトンボのタイプだ。
国道2号線沿いを自転車で、三原駅近くの図書館に向かうあいつと私。
あいつとの会話と言えば、テレビ番組や音楽、マンガやゲームと普通の友達と同じだ。
お笑い番組なら、とんねるず、ダウンタウン、ウッチャンナンチャン。
ドラマなら、織田裕二、江口洋介、鈴木保奈美など。
私が好きだったアイドルと言えば、牧瀬里穂や観月ありさ。
音楽は、主にバンドやロックが好きだったが、流行りの音楽も聴いている。
マンガは、ドラゴンボールやろくでなしBLUES、スラムダンクなどジャンプ掲載が多かった。
あいつには2歳年上の兄貴がいて、ゲームボーイやスーパーファミコンなどのゲームもする。
同じ陸上部に所属していることもあり、部活ネタも話せる。
話題には事欠かず、内気な性格の私でも、気兼ねなく会話ができる。
当然、好きな人として意識していて、学校内では遠慮がちなのだが。
三原城跡を横目に、図書館に向かうあいつと私。
あいつと話しながら、ふと考えてしまう。
「(あいつって、誰のことが好きなんじゃろぉー。?)」
「(付き合ってる人とかいるんじゃろぉーか?)」
二人で休日を過ごせる喜びと裏腹に、あいつのことが気になって仕方がない。
そんなことを考えているうちに、図書館に着いた。
「着いたね。真面目に勉強しなよ。」
「友野もじゃろぉ。」
図書館に入り、空いている学習スペースにショルダーバックを置き、ふたりで勉強することに。
ふたりで過ごす休日。
どんな展開が待っているのやら。
続きは、次回で。
第6話はこちら↓
閲覧ありがとうございました。
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