【if】~もう少しだけアイツと一緒にいられたら~ 第18話
体育大会の午後の部が始まる。
俺の出番は、大会最後の男女混合リレーだ。
昼休憩が終わり、校庭に出た。
「緒川くん。」
「山本さんじゃん!」
「100m惜しかったねぇ。」
「見とったん?」
「見とったよ。」
同じ陸上部でありながら、こんなかわいい女子がいることを知らなかった。
俺は、アイツのことばかり見ていたからだ。
アイツ以外で気になる女子は初めてだった。
「緒川くんは、100mだけなん?」
「俺、混合リレーに出るんよ。」
「ウチも出るんよ。」
「そうなんじゃね。友野も出るんよ。」
「友野さんは、速いけぇね。」
「これからどうするん?」
「特に決めとらんよ。緊張してきたけぇ、ちょっと走ろうと思っとるんよ。」
「ウチも一緒に走っていいん?」
「えぇけど。」
山本さんと一緒に走ることになり、ストレッチをした後、軽く走った。
そのあとダッシュを数本こなし、緊張が少しほぐれた。
「さすが男子。やっぱり速いねぇ。」
「もっと速いやつ、おるけぇ。」
「頑張って。応援しとるから。」
「おぅ。」
お互い、クラスメイトと共に過ごすことになった。
クラスメートの男子連中と過ごすことになった俺。
「(山本さん、ぶちかわいいなぁ)」
そんなことを考えていた。
「緒川っち、山本さんと何してたん?」
「ん?混合リレーで緊張してきたけぇ、ちぃと走っとったんよ。」
「緒川ちゃんは、友野じゃろう?」
「えっ!そがいなことないけぇ。」
「小学生の時からじゃろ。」
「...。」
「バレバレじゃよ」
小学生の頃、仲良し3人組で好きな子を言い合ったことがあった。
その話は、クラスメートの男子にも伝わっていた。
アイツは知らないと思うけど。
アイツの話から、ゲームやマンガの話になり、リラックスした時間を過ごせた。
体育大会も終盤となり、男女混合リレーの時間が近づくと、また緊張してきた。
「緒川っち、混合リレー始まるみたいじゃよ。」
「おぅ。」
混合リレーの参加生徒が入場門に集まり出した。
「緒川、遅いぞ!」
アイツから声を掛けられた。
「友野、緊張しとるじゃろ?」
「緊張しとるんは緒河じゃろぅ。」
クラスごとに整列したあと、行進してグラウンドに入っていく。
緊張が込み上げてきて、咳き込んだ。
「緒川っち、大丈夫なん?」
「大丈夫じゃよ。ちょい緊張しとるけぇ。」
男女混合リレーが始まる。
第一走者と第二走者が女子、第三走者とアンカーが男子で競う。
第一走者は陸上部でアイツとも仲の良い川中さん。
第二走者はアイツ。
第三走者が俺で、アンカーにバトンを渡す。
遂にリレーが始まった。
第一走者の川中さんは、3位を走っている。
リレーの状況をみながら、準備しているアイツのことを見ていた。
3位でバトンを受け取ったアイツ。
女子の中で一番の俊足だったアイツは一気に二人を抜いて、1位になった。
そして、アイツからバトンを受け取る。
頭一つ分背の高い同級生が揃う中、遮二無二走った。
何とか一位を死守して、アンカーのクラスメートにバトンを渡す。
さすがクラスで一番の俊足だったアンカーが一位でゴールした。
クラスメートの歓声が大きくなった。
「よっしゃー!」
クラスメートが集まり、喜び合った。
そして、アイツとハイタッチした。
アイツと手が触れ合うのは、小学生の時のフォークダンス以来だろうか。
5クラスの中で総合一位となり、クラスメートとワイワイ騒いで喜んだ。
教室に戻ってからも、熱気は冷めない。
「緒川っち、よう頑張ったなぁ。」
「速い奴ばっかじゃったから、大変じゃったよ。」
「緒川っちも、速かったじゃろ。」
「まだまだじゃよ。」
クラスメート同士で称え合って、喜び合った。
緊張から解放されて、疲れがドッと出た。
担任の先生も喜び、生徒を称えた後、下校となった。
男子同士で喜び合っている中、アイツがいないことに気付いた。
靴に履き替えながら、アイツの下駄箱を目をやると、既にアイツの靴は無かった。
「俺、部室寄っていくけぇ。」
「じゃあなぁー。」
アイツのことが気になり、クラスメートと別れた後、部室に向かった。
同級生や先輩たちが何人か集まっているのが見えた。
「緒川、速かったな。」
「まだまだっス。」
先輩たちと話をしながら、アイツを探していた。
アイツは見つからない。
すると、山本さんに声を掛けられた。
「緒川くん、お疲れー。」
「お疲れー。みんないるん?」
「いるよー。陸上部は活躍したけぇね。」
「友野は?」
「部室には来てないみたいじゃよ。」
「そっか。もう帰ったんかな?」
アイツのことを気にしながら、会話が続く。
「来週は、幅跳びの練習一緒にせん?」
「えぇよ。先輩から他の種目もやれって言われとるし。」
「緒川くんは、走り幅跳びも得意なんよね?」
「大したことないんよ。」
「来週、楽しみにしとるね。」
山本さんから誘われ、にやけそうになるのを必死でこらえた。
「今日は疲れたけぇ、もう帰るわ。」
「緒川くん、バイバイ!」
「おぅ、また来週なぁ。」
あんな可愛い女子に誘われて、浮かれないはずはないのだが、アイツのことが気になる。
早足で校門を出て、国道沿いの歩道を小走りして、アイツを追いかける。
駅前まで来たところで、遠くにアイツの後ろ姿が見えた。
さらにペースを上げてアイツを追いかける俺。
足がつりそうになりながら、商店街の横を走った。
ひとりで先に帰っていったアイツ。
アイツに起きたこととは?
それは次回で。
第19話
Coming Soon!
閲覧ありがとうございました。
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