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【if】~もう少しだけアイツと一緒にいられたら~ 第16話

もう少しだけアイツと一緒にいられたら 小説

【if】~もう少しだけアイツと一緒にいられたら~ 第16話

新しいランニングシューズを手に、部室に入った。
「おはようさんですっ!」
「オッス!シューズ買うたんか?」
昨日買ったばかりのシューズを見せながら、
「はい、これッス!」
「アシックスにしたんか。えぇなぁ。」
カバンを棚に置き、体操服に着替えた。
そして、真新しいシューズを履き、部室を出た。

 

「新しいシューズじゃけぇ、しっかり履き慣らしとけよ!」
「うっス!」
新しいシューズで心機一転、柔軟体操をした後、ランニングを始めた。

シューズの感触を確かめながら、グラウンドを走った。
その後、先輩たちは実技、1年生は学校周りのコースを走り込むことに決まっている。
それは、女子も同じだった。

走りながら、アイツのことをチラチラ見ている俺。
アイツも新しいシューズを履いている。
一緒に買いに行ったことは、みんなには内緒だ。

 

朝練を終え、制服に着替えてから部室を出ると、後ろから声を掛けられた。
「朝から疲れたわ」
振り返ると、陸上部で一緒の洋ちゃんがいた。
「洋ちゃんは何にするんか決めたん?」
「ハードルにしたんよ。おがわっちは?」
「俺は短距離。」

洋ちゃんとは小学生の頃から、ゲームをして良く遊んでいた。
三国志好きという共通点もある。
中学では別々のクラスになったが、仲は良かった。

 

勉強が好きじゃない俺は、勉強しているフリをしながら、図書館で借りてきた横山光輝三国志を隠れて読んでいる。
「緒川...、立ってろ!」
まんがを読んでいるのが教師にバレて、立たされる俺。

立たされたことで、アイツのことが見やすくなった。
アイツとはまだまだ距離があり、遠くから見ていることが多かった。

 

結局、授業が終わるまで立たされていた俺。
この頃の俺は、不良と呼ばれる部類ではなかったが、不真面目な生徒だった。

小さい頃から歴史が好きだった俺は、三国志ブームで三国志に興味を持つようになった。
小学校高学年になってゲーム機を買ってもらって以来、ゲームばかりしていた。
そして、熱中していた
ミニ四駆は卒業し、スポーツカーが好きになった。

  • S13シルビア、Z32フェアレディZ、R32スカイライン
  • インテグラ、シビック、NSX
  • インプレッサ
  • ランエボ、GTO
  • ハチロク、セリカ、スープラ

そして、カープファンで、前田智徳を応援していた。

休憩時間は、友達と何れかの話をするのが日常だった。

       

       

 

授業が終わり、部活の時間になった。
「やっと終わったわ。ほいじゃあ、部活じゃ!」
走るのが好きな俺は、部活が楽しかった。

柔軟、走り込み、筋トレ。
最近では、少しずつ実践練習が増えている。
小学校ではやらなかったクラウチングスタートからの30mダッシュだ。

身長が150cmを超え、足が速くなってきた俺は、先輩の横に並びかけた。
「緒川、最近速うなったのぉ。危うう抜かれるとこじゃった。」
「いえいえ、まだまだですけぇ。」
「おまえ、体育大会は何に出るん?」
「100走と男女混合リレーに出るッス。」

 

痩せていた俺は、体の線が細く、特に上半身がガリガリだった。
腹筋や背筋、腕立て伏せに取り組んでいると、
「張り切っとるのぉ。」
部長から声を掛けられた。

「部長も気合入っとりますね。」
「ワシら3年生は、この夏が最後の大会じゃけぇな。」
部長は短距離走者で、100mと200mに出場予定だった。

「緒川は種目、どうするんじゃ?」
「短距離希望ッス。」
「そうなんか、分かった。一通り全種目試してから、決めるけぇな。」

足の速さに自信を持っていたが、ジャンプ力にも自信があった。
瞬発力と体の軽さで、垂直飛びは70cmを超えていた。
走り幅跳びは4m以上、走り高跳びははさみ飛びで130cmを飛んでいた。
それでも、もっと足が速くなりたかった俺は、短距離を中心に練習していた。

もう少しだけアイツと一緒にいられたら

 

部活を終えた俺は、洋ちゃんと下校することになった。
部室を出て、グラウンドの横を通り、校門に向かった。
校門前までくると、アイツの姿が見えた。

「久保君、お疲れ。」
アイツが洋ちゃんに声を掛けた。
「おう。」
何となく不愛想にみえた。
女子に興味がないのか?
それともアイツを意識しているのか?

洋ちゃんとはゲームやマンガ、三国志の話で盛り上がるが、女子の話をしたことはない。
「もう暗いけぇ、はよ帰ろ。」
アイツにそう言われて3人で下校することになったが、これが初めてのシチュエーションだった。

もう少しだけアイツと一緒にいられたら

 

「昨日買ったシューズはどうなん?」
「今、履き慣らしとるところじゃけど、結構いい感じじゃな。」
「ウチもじゃよ。」
不思議そうな顔をしている洋ちゃんに気付いた俺は焦って
「友野は種目決めたん?」
と話を逸らした。

「短距離じゃよ。知っとるじゃろ。」
アイツのことを意識している俺とは違い、アイツは俺を全く意識している素振りはない。
一緒に買いに行ったことも話してしまいそうな状況に、冷や冷やしていた。
気まずそうにしている洋ちゃんの顔も見えた。
俺がアイツを意識していることは、薄々気付いている。

変な雰囲気になりかけたものの、所詮は小学生の延長だ。
ゲームやマンガ、バラエティ番組の話をしながら、家路に着いた。
長い登り坂を超えたところで洋ちゃんと別れ、アイツとふたりきりになった。
何か緊張している俺と普段通りのアイツ。

アイツをアパートまで送ったあと、ふと思うこと。
「(アイツは俺のこと、どうも思ってないんじゃろうな。)」
そんなことを考えながら、帰宅した。

もう少しだけアイツと一緒にいられたら

 

授業はつまらないが、学校生活や部活は楽しかった。
体育大会に向けて、体調とシューズの状態を整えていく1週間は早かった。

そして、体育大会の朝を迎えた。
ワクワクして良く眠れず、いつもより早く目が覚めた。
ウズウズしてジッとしていられない。
朝飯を食べて、そのまま学校に向かった。

学校に着くと、アイツはもう来ていた。
「早いのぉ!」
「緒川もじゃろぉ。ウキウキして眠れんかったんじゃろ?」
「まぁな。」
「子供みたいじゃね。」

茶化されながら、教室に向かう。
体調は万全。
シューズも十分履き慣らした。
あとは、アイツにイイところをみせるだけ。
果たしてその結果は?
それは、次回で。

もう少しだけアイツと一緒にいられたら

 

第17話

 Coming Soon!

 閲覧ありがとうございました。

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