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【if】~もう少しだけアイツと一緒にいられたら~ 第14話

もう少しだけアイツと一緒にいられたら 小説

【if】~もう少しだけアイツと一緒にいられたら~ 第14話

どの部でも、3年生は最後の大会に向けて、最後の追い込みをかけている時期。
1年生のアイツと俺は、大会には出られないものの、体育大会に向けて走り込んでいる。
体育の授業でも、100m走とクラス対抗の男女混合リレーの練習で一緒だった。

どれくらい走っただろうか?
中学に入学して3ヶ月、ランニングシューズがボロボロになっていた。
「緒川、どしたん?」
「シューズがもうボロボロなんよ。」
「ウチもじゃよ。日曜に買いに行かん?」
「そうじゃね。それにシューズが小さいんよ。」
「足大きくなったんじゃろ。」

クラスメートに内緒で、アイツを誘っていた俺。
日曜に遊びに行く約束をしたものの、どこに行くのか決めていなかったのだが、
スポーツ用品店にランニングシューズを買いに行くことに決まった。

 

午前中の授業を終え、昼食の時間になった。
給食が出ない土曜日は、持参した弁当を自由な席で食べられる。
俺は、陸上部で一緒のアイツと川中さんの3人で食べることが多い。
今日も3人で談笑しながら、食事を摂る。

「緒川、よう食べるんじゃね。」
「これくらい食べんと足らんけぇね。」
「最近、背のびたじゃろ?」
「3cm伸びとった。」
「男子は伸びるよね。」
「友野も伸びとるじゃろ。」
「160cmになったんよ。緒川には抜かれんよ。」
「脚も太くなったじゃろ。」
「緒川って最近エロいけぇ、川中さんも気を付けた方がえぇよ。」
「...、そういう意味で言ったんじゃないんじゃけど。」
「この前、ウチの胸見とったじゃろ。」
「えー、そうなん?」
「...、見とらんよ」
「緒川、女子にはわかるんよ。」

いじられキャラな俺は、女子からモテるわけではないが、茶化されることが多い。
先輩や先生からも可愛がられている。
アイツと恋愛関係にはなっていないものの、小学生の時より関係が近くなり、仲良くなった。
これからどうなるのかは分からない。
いつまで一緒にいられるかも分からない。
それでも、今が楽しくて仕方がなかった。

 

午後の部活が始まった。
まずは陸上部伝統のコースをひたすら走り込んだ。
土曜日の部活はいつもよりハードで、1年生にとっては、この走り込みだけで精一杯だった。
入部して3ヶ月間の走り込みで体力がつき始めてはいても、やはりきつい。
走り込みの後は、筋トレに続き、実践練習となった。
短距離を希望している私は、スタートの練習や30mダッシュが課せられた。

全力疾走でダッシュしていた時、
「ブチッ」
という音と共に、俺は激しく転んだ。

何が起きたのか、自分でも分からなかった。
部員や先生が騒然として、自分のところに集まって来るのが分かった。
「(怪我をしてしまったのか・・・?)」
膝や肘に擦り傷はあったものの、立ち上がり、歩くことができた。

 

「大丈夫なんか?」
「大丈夫です。」
「保健室行った方がえぇじゃろ。」
「はい。」

顧問の先生に連れられ、保健室で傷の消毒をしてもらった。
幸いにも、大きな怪我はなかった。

グラウンドに戻ると、靴底がめくれ上がったシューズが置いてあった。
「シューズがボロボロじゃ。」
「迷惑かけて、すいません。」
「よう走っとったけぇな。代わりのシューズあるんか?」
「通学用しかないです。」
「今日はもう休んどけ。怪我したじゃろ。」
「はい。」

グラウンドで練習するみんなを見ていた。
「緒川、大丈夫なん?」
「おう、シューズが壊れただけじゃけぇ。」
「怪我したんじゃろ?」
「擦り傷じゃよ。普通に歩けるけぇ。」

 

心配そうな顔をしているアイツ。
部長が近づいてきて、
「大丈夫か?」
「はい。大丈夫です。」
「よう走ったけぇな。シューズ買っとけよ。」
「はい。すいません。」
「明日、緒川とシューズ買いに行くんですよ。」
「そうじゃったんか。お前ら、いつも
仲えぇな。」

アイツは俺のことをどう想っているのだろうか?
ふたりで出かけることを平然と人に言うアイツ。
アイツにとって俺は、友達のひとりくらいにしか思っていないのかも知れない。

それでも、いつか...。

 

部活を終えて、下校しようとしていると、
「緒川、怪我大丈夫なんか?誰かに送ってもらえよ。」
「はい。」
「ウチが送ったるよ。」
「じゃぁ、友野、頼むわ。いつものことじゃけどな。」
先輩に茶化された後、アイツと下校した。

「明日、行けるん?」
「行けるよ。大した怪我じゃないけぇ。」
「そっか。じゃぁえぇけど。」
「シューズ買わんと練習できんし。」
「そうじゃね。じゃぁ明日買いに行こ。」

アイツと会話しながらの下校は、時間が経つのが早い。
あっという間にアイツのアパートまで着くと、
「じゃぁ、明日な。」
「家まで送らんでえぇの?」
「大丈夫じゃよ。みんな大げさなんよ。」
「ならえぇけど、気ぃ付けてね。」
「おぅ。」

アイツと別れた後、家に帰り、壊れたシューズを母親に見せた。
「明日、新しいの買いに行くけぇ。」
泥だらけになったジャージを手渡して、風呂に入った。
「(明日はアイツと買い物かぁー)」
体中の泥をシャワーで洗い流して、風呂から上がり、傷の手当をした。
シューズが壊れて怪我をした姿を見た両親は、新しいシューズを買うお金をくれた。
夕食を済ませ、その日は早めに床に就いた。

翌朝7時に目が覚めた。
10時間も爆睡していた。
昨日は練習がハードで、怪我もしたこともあり、自分が感じていた以上に疲れていたようだ。
朝食を済ませ、ショルダーバッグを肩にかけ、家を出た。
そして、自転車でアイツのアパートに向かう。
アパートに着くと、アイツは自転車に乗りながら、待っていた。

 

「おはよう。遅いぞ!」
「昨日帰って爆睡したけぇ。」
「怪我は大丈夫なん?」
「大丈夫じゃよ。もう痛くないけぇ。」
「じゃ、行こ。」

自転車に乗り、市内のスポーツ用品店に向かう。
思い切ってアイツを誘った俺にとっては、デートの気持ちでいる。
アイツにとっては...。
さて、このデート?で何が起こるのか。
それは、次回で。

 

第15話

【if】~もう少しだけアイツと一緒にいられたら~ 第15話
国道2号線沿いに自転車を走らせるアイツと俺。いつもと同じように他愛もない話をしながら、三原駅前を目指した。駅前の天満屋に着き、自転車置き場に自転車を置いた後、店内に入った。まず向かうのは、スポーツ用品売り場だ。目的のシューズコーナーに向かい、お互い自分のものを選んだ。

 閲覧ありがとうございました。

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