【若害】という新たな世代論
全世代が協働する社会を目指して
「老害」にはなりたくない。
そんな気持ちから、私は自分を見つめ直し、Z世代の若者の考え方を理解しようと心がけています。

しかし...。
【若害】という言葉を聞くことが増えてきました。
SNSでも職場でも、この新しいレッテルが静かに、そして確実に浸透しつつあります。
「老害」という言葉で世代間を断絶したように、今度は若者に批判の矛先が向けられています。
この記事では、「最近の若者は…」では片付けず、「若害」という言葉の背後にある社会構造の変化と、世代間ギャップの深層を探り、建設的な解決策を考えてみます。
私がみた世代間ギャップ
「老害」と「若害」の間に立たされた私。
ハラスメントに委縮した老害上司と問題回避したい若手が直接対峙することは無かったのですが、中年の私は、両者の間に立たされて、お互いの主張をぶつけられる立場でした。
「老害」:経験論、精神論、根性論が強く、苦労することが良い仕事で美徳と考える傾向がある。
過去の成功にしがみつき、新しく導入することを避け、現状維持にしがち。
「若害」:コスパ、タイパといった効率を重視するため、必要なことも省略する傾向がある。
個人主義で、短期的な結果を重視しがち。
上記のような悪い点が目立ってしまいますが、良い点もあります。
- 過去の成功経験・失敗経験は、企業や組織、社会にとって貴重なもの。
- 新たなチャレンジには、メリットがある一方でリスクが伴うため、勢いで進めるのではなく、慎重さも必要。
- 無駄に消費してしまっている時間や資源・資産に対して、効率化を求めるのはとても重要。
- スキルアップやキャリアアップのために自発的に学ぶ姿勢は見習うべき。
時代の変化が早く、多様性が求められる現代社会で生きる私たちには、「個性」と「協調性」が尊重される社会を目指すべきだと考えています。世代間ギャップで対立するのではなく、「温故知新」の姿勢で、過去から学び、未来を築いていくべきでしょう。
老若から学び、全世代が協働できる社会を創造できるよう、私も学んでいきます。
【若害】とは何か? 老害の対義語として生まれた新たな概念
言葉の誕生と広がり
「若害」は、周囲に迷惑をかける高齢者を指す「老害」の対義語として注目され始めた、新しい概念で、メディアでも取り上げられるようになり、自分本位な言動で周囲に困惑や反感を招く若者を指しています。
若害には、「社会的害悪」という強いニュアンスが込められており、単なる未熟さや経験不足を指すものではなく、組織や社会に対して能動的に問題を引き起こす存在として認識されています。
【若害】の4つの行動パターン
権利過敏型 主張する権利と回避する責任
「働き方改革」や「労働者の権利」といった言葉を盾に、残業拒否や有給取得を強く主張する。診断書を取得して休職に入ることも辞さない。建設的な代替案を提示することなく、チームの負担を考慮することもない。
権利の主張は保障されたことではあるものの、問題はその行使の仕方にあります。
「自分の権利」だけを声高に叫び、「組織への責任」や「同僚への配慮」が欠けているかもしれません。
礼儀軽視型 効率という名の人間関係破綻
「挨拶、報告・連絡・相談(報連相)」といった基本的なコミュニケーションを「タイパが悪い」、「非効率」として省略する。
上司へのメール返信が「そっか」「了解」の一言で終わり、敬語すら「時代遅れ」として軽視する。
これらの慣習は「生産性を阻害する無駄な儀式」に過ぎないという論理から生じているようですが、組織においてのコミュニケーションが持つ信頼関係の構築を理解していない。
その結果として、チーム全体の協調性を損なうことになります。
個人優先型 自己実現至上主義の弊害
「やりがい」、「自己実現」、「キャリアアップ」を何よりも重視し、チームの目標や組織の方針よりも「個人のやりたいこと」を優先する。
入社早々に「私の成長プランを教えてください」「スキルアップのための研修制度はありますか」と要求する一方で、地味な基礎業務や雑務は「成長につながらない」として積極的に避ける。
自己実現への意欲自体は評価すべきものですが、組織への貢献や同僚との協力という観点が欠如しています。「会社は自分を成長させてくれる場」であって、「自分が会社に貢献する場」ではないという概念が根底にあるようです。
瞬間離職型 問題回避としての退職
少しの指摘やプレッシャー、連休明けの憂鬱さなどを理由に、何の相談もなく突然退職を決意する。直接的な対話ではなく退職代行サービスを利用して一方的に退職の意向を伝える。
理由の説明や引き継ぎへの配慮も最小限に留める。
ストレス耐性の低さもあるかもしれませんが、本質的な問題解決よりも問題回避を選択する思考パターンにあるようです。困難な状況に直面した際、乗り越えようとする努力よりも、環境を変えることで解決を図ろうとする傾向が強いようです。
なぜ【若害】は生まれたのか? 複合的な社会背景
不安定な時代を生きる世代の価値観形成
現代の20代・30代は、物心ついた頃から社会的危機を経験してきた世代です。
災害と危機の連続体験:2011年の東日本大震災は、当時10代だった世代に「いつ何が起こるか分からない」という根深い不安を植え付けた。リーマンショックの余波、頻発する自然災害、コロナ禍など、社会の基盤が揺らぐ経験を重ねてきた世代です。これらの経験によって、職業観や人生観に大きな影響を与えています。一つの企業に身を委ね、終身雇用に期待するような従来の働き方に対する懐疑的な見方が根付いています。
安定への新しいアプローチ:求められる「安定」が、一つの組織に依存することではなく、複数のスキルや選択肢を持つことで実現することに変化しています。転職やフリーランス、副業といった働き方を積極的に検討し、常に「他の選択肢」を意識している。
この価値観自体は時代に適応した合理的な判断ではありますが、組織に対するコミットメントの低下という副作用が生まれています。
デジタルネイティブ世代の認知特性
情報処理の高速化と短期集中:SNSやスマートフォンに囲まれて育った世代は、短時間で大量の情報を処理することに長けています。その反面、長期的に一つの課題に集中することや、即座に結果が見えない作業に対する忍耐力は低下しているようです。
フィードバックの即座性への期待:ゲームやSNSでは行動に対する反応が即座に返ってきます。この環境に慣れ親しんだ世代は、職場でも同様の即座なフィードバックや成果の可視化を期待する傾向が強いです。「なぜこの作業が必要なのか」「これをやることで何が得られるのか」が明確でないと、モチベーションを維持しづらいようです。
人材不足が生んだ構造的歪み
売り手市場の副作用:少子化による深刻な人材不足は、労働市場を完全な「売り手市場」に変わりました。企業は若手社員の確保と定着に必死になり、「お客様扱い」する傾向が生まれています。この状況が若手社員に「自分たちは貴重な存在」という認識を植え付けてしまい、組織に対する過度な要求や、簡単に転職を選択する行動パターンを助長しています。
過保護な組織文化の弊害:企業側も早期離職を防ぐため、厳しい指導や叱責を避け、過度に配慮する傾向が強まっています。そのため、適切なフィードバックを受ける機会が減り、自己認識と実際の能力にギャップを生じやすくなっています。
職場で起きている深刻な現実 具体的事例から見る問題の深刻度
コミュニケーション破綻の実例
事例1:無断欠勤の権利化
月曜日の朝、「今日は調子が悪いので休みます」というLINEメッセージが届く。事前申請や代替案の提示は一切なし。上司が就業規則について説明すると、「そんなルール、聞いていません」「体調不良は仕方ないですよね」と反論。有給制度の説明をしても、「急に体調が悪くなったのに、事前申請なんて無理です」という論理で押し切る。
事例2:敬語放棄とカジュアル過ぎるコミュニケーション
部長クラスの管理職に対しても「おつかれー」「了解っす」といったタメ口での会話。メールでは「件名なし」「宛名なし」で本文も「資料見ました。そっか、なるほど。」という一行で終了。指摘すると「コミュニケーションの本質は伝わることでしょ?形式にこだわるのは時代遅れです」と返答。
事例3:過度な要求と脆弱なメンタル
入社3ヶ月で「私のキャリアプランについて上司と面談したい」「スキルアップのための外部研修を受けさせてほしい」「この業務は成長につながらないので、もっとやりがいのある仕事をください」と矢継ぎ早に要求。
しかし、軽微な指摘を受けると「パワハラですよね」「メンタルがやられます」と過敏に反応。上司が業務の改善点を指摘しただけで涙を流し、翌日から「適応障害」の診断書を持参して休職に入る。
世代間対話の平行線
実際の職場で交わされる典型的な対話例です。

「もう少し自分で考えて動けよ。昔は先輩を見て学んだもんだ。何でも教えてもらえると思うな。」

「でも、それってちゃんと教えてもらってないってことですよね?失敗したら責められるのに、教えてもらえないなんて理不尽です。効率悪いし、時間の無駄じゃないですか。」
この対話は「経験重視・精神論」の価値観と「合理性・効率性重視」の価値観の根本的な衝突を表しています。どちらにも理があるだけに、平行線をたどりやすいです。
【若害】の深層分析 個人の問題? 社会の問題?
個人要因 発達段階と心理的特性
アイデンティティ形成の未完了:20代から30代前半は、心理学的には「成人期初期」と呼ばれ、まだアイデンティティ形成の過程にある。自分が何者であり、何を目指すべきかを模索している段階で、組織の価値観と個人の価値観の間で揺れ動くのは自然な現象です。
承認欲求の強さと挫折耐性の低さ:SNS世代特有の強い承認欲求と、失敗体験の少なさから来る挫折耐性の低さが組み合わさることで、職場でのちょっとした困難に対しても過度に反応しやすくなっています。
社会構造要因 教育システムと社会制度のミスマッチ
学校教育との乖離:現代の学校教育は、個人の能力開発と自己実現重視にシフトしています。
「自分らしさ」「個性」「創造性」が強調される一方で、集団への適応や協調性、忍耐力といった「社会性」の育成は相対的に軽視されがちです。
この教育を受けた世代が社会に出ると、学校で身につけた価値観と職場で求められる行動規範の間にギャップが生じることになります。
情報社会の光と影:ネット上には、「ブラック企業」「パワハラ」「働き方改革」といった労働者の権利に関する情報があふれています。これらの情報は労働者の意識向上に寄与する反面、職場での正当な指導や業務負荷に対しても過敏に反応する要因にもなっているようです。
企業が直面するジレンマ 指導の困難さ
パワハラ認定への恐れ
現代の管理職が最も恐れるのは、適切な指導が「パワハラ」として問題化することだ。厚生労働省のパワハラ定義は比較的明確だが、受け手の主観的な感じ方によって左右される部分も大きいです。
その結果、多くの管理職が萎縮し、「腫れ物に触る」ような接し方になってしまう。適切なフィードバックを行わないことで、若手社員の成長機会を奪い、組織全体のパフォーマンス低下を招くという悪循環が生まれています。
人材確保と育成のバランス
企業が深刻な人材不足に直面しており、採用した人材は戦力として育成する必要がある。しかし、厳しく指導すれば離職リスクが高まり、甘く接すれば成長しない。このジレンマの中で、多くの企業が明確な方針を見出せずにいるのが現状です。
対立を超えて 建設的な解決策への道筋
企業が取り組むべき構造的改革
評価・フィードバックシステムの透明化
感情的な指導ではなく、論理的で客観的なフィードバックシステムを構築します。
- 明確な評価基準の設定と共有
- 行動ベースでの具体的フィードバック
- 改善すべき点と改善方法の明示
- 成長過程の可視化

「この業務では○○の部分で改善が必要だね。具体的には△△することで、□□という成果が期待できるよ」
研修制度の抜本的見直し
従来の「見て覚えろ」式の指導から、理論と実践を組み合わせた体系的な教育プログラムへの転換が必要です。
- なぜその業務が必要なのかを説明
- 業務の全体像と個人の役割の明確化
- 段階的なスキル習得プログラム
- 定期的な進捗確認と軌道修正

ちゃんとした教育をせず、ほったらかしであったり、体よくOJTと称して教育しているかのように装う企業があるのも現状です。
形だけの教育計画、職務分担になっている企業や組織は反省が必要ですね。
世代間理解促進プログラム
ベテラン社員向けの「世代間ギャップ理解研修」も同時に実施すべきでしょう。
若手の価値観や行動背景を理解することで、効果的なコミュニケーションを可能にします。
若手社員が意識すべき成長マインドセット
「若さ」から「実力」への転換期の認識
若さという資産は有限で、いずれは実力で評価される時期が来ることを認識する必要があります。
20代後半から30代前半は、この転換期にあたる重要な時期です。
- スキルと専門性の継続的な向上
- チームワークと協調性の重視
- 長期的なキャリア視点の獲得
- 困難への対処能力の向上
権利と責任のバランス感覚
「権利」を主張することは正当ですが、組織や同僚に対する「責任」も果たす必要があります。
- 権利主張の前に代替案の提示
- 個人の事情と組織の事情の調整
- 長期的な信頼関係の構築を重視
- Win-Winの解決策の模索
コミュニケーション能力の向上
効率を重視することも大切ですが、コミュニケーションを軽視してはいけません。
- 基本的な敬語とビジネスマナーの習得
- 相手の立場を考慮した伝え方
- 報告・連絡・相談の徹底
- 感謝と謝罪の適切な表現

効率よく仕事をすることは大切ですが、最低限のコミュニケーションを意識することで、チームワークが良くなります。
ベテラン世代に求められる柔軟性
価値観の多様性の受容
「昔はこうだった」という経験を絶対視するのではなく、時代の変化とともに価値観も変わることを受け入れる柔軟性が必要です。
指導方法の現代化
精神論や経験論だけでなく、論理的で体系的な指導方法を身につける必要があります。
若手の特性を理解し、効果的なコミュニケーション方法を模索することが重要だ。
成功事例から学ぶ 実践的なアプローチ
A社の取り組み メンター制度の革新
先輩後輩関係とは別の専門的なメンター制度を導入。
メンターは業務指導だけでなく、キャリア相談やメンタルサポートも行う。
メンターにも専門的な研修を実施し、世代間コミュニケーションのスキルを身につけさせている。
B社の成果 透明性の高い評価制度
評価基準を完全に可視化し、何をどのレベルで達成すれば昇進・昇格できるかを明確にした。
四半期ごとの面談で進捗状況を確認し、必要に応じて軌道修正を行う。
若手社員からは「ゴールが見えるので頑張れる」という声が多く聞かれる。
社会全体で考えるべき課題
教育システムの改革
学校教育段階から、個人の能力開発と社会性の育成をバランス良く行う必要がある。協調性や忍耐力、問題解決能力といった「社会で働く力」の育成にもっと注力すべきだろう。
働き方の多様化への対応
一律の働き方を前提とした従来の組織運営ではなく、多様な価値観や働き方を受け入れられる柔軟な組織作りが求められている。リモートワーク、フレックスタイム、副業許可など、個人の特性や事情に応じた働き方の選択肢を増やすことで、「若害」とされる行動を減らすことも可能でしょう。
真の問題は年齢ではなく「硬直性」 本質的な課題
「老害」と「若害」の本質的な違いは実年齢にあるものではないでしょう。
重要なのは、変化を受け入れ、相手の立場を理解しようとする「柔軟性」です。
自分の価値観や経験に固執し、相手を一方的に批判するだけの姿勢は「害」となります。
世代を問わず、相互理解と建設的な対話を心がける人たちが、組織や社会の発展を支えていきます。
硬直性の兆候と柔軟性の指標
<硬直性の兆候>
- 自分の価値観や経験の絶対視
- 相手の立場や事情への無理解
- 批判的な態度の一方的な表出
- 変化への強い抵抗感
- 対話よりも決めつけを優先
<柔軟性の指標>
- 多様な価値観の存在を認める
- 相手の背景や事情を理解しようとする
- 建設的な解決策を模索する
- 変化を成長の機会と捉える
- 対話を通じた相互理解を重視
まとめ 未来への展望
「若害」という現象は、現代社会の構造変化が生み出した問題です。この問題を世代論の単純な対立として考えるのではなく、より本質的な視点から捉える必要があります。
私たちが目指すべきは、世代を超えた相互理解と協働です。それぞれの世代が持つ強みと課題を認識し、互いに学び合える関係性を築くことができれば、「若害」も「老害」もない、建設的な社会を実現できると考えています。
重要なのは、レッテルを貼り合うことではなく、対話を重ねることです。異なる価値観や経験を持つ人たちが一つの社会で生きる以上、摩擦や誤解は避けられないかも知れません。
それでも、成長と改善の機会と捉え、建設的な解決策を模索し続けることで、より良い社会を創造していけるでしょう。
現代社会が直面するこの課題解決は簡単なことではありません。
一人ひとりが相手を理解しようとする姿勢を持ち、社会が適切な仕組みとサポートを提供することで、世代を超えた協働は必ず実現できます。「若害」という言葉が過去のものになるよう、今こそ行動を起こすときなのかもしれません。
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