三国志 第一話③ 蒼天すでに死す 黄天まさに起つべし
山に入り、薬草を採って暮らしを立てている3兄弟がいた。
長兄を張角、次兄を張宝、末弟を張梁という。
張角は挙人試験に落第した書生だった。
漢王朝は腐敗し、民衆は飢えに苦しみ、流民となっていたこの時代に失望しながら、山中に身を隠すように暮らしていた。
張角はいつものように薬草を採りに出かけ、暗雲垂れ込める山中に入っていった。
人影ない山中を歩いていると、岩に座り込んだひとりの老人に出会った。
「このようなところで、何をされているのですか?」
兄弟以外に会うことのない山中にいたその老人に張角は尋ねた。
「その薬草は何に効くのかな?」
老人は興味無さそうに聞いた。
「この薬草は・・・」
張角が困りながら答えようとすると、
「国は衰え、民衆は困窮しておる。そなたが救ってみないかね?」
そう言うと老人は張角を洞窟に呼び入れ、三巻の書物を手に取り、
「これは太平要術の書というもの。そなたにやろう。その書を読めば民を救い、国を正すことができるであろう。」
張角が受け取ると、老人は続けて、
「天に代わって教えを広めよ。もし悪しきことに使えば天罰が下るであろう。」
張角が平伏して名前をたずねると、
「わしは南華老仙じゃ。」
張角が老人を見返すと、老人は立ち去った後だった。
張角はその書物を読みふけり、日夜習得に励み、「太平道人」と号した。
中平元年(184年)正月、疫病が流行して民衆を苦しめていた。
張角は護符と水を施して、苦しむ民衆の病を癒していった。
そして全国各地を渡り歩き、民衆を救っていくと、弟子や信徒が増えていき、自らを「大賢良師張角」と名乗った。
「天に代わって国を正す時が来た。」
そう思った張角は黄色の布を握りしめ、
「蒼天すでに死す、黄天まさに起つべし!」
弟子や信徒たちは黄色の頭巾を身に付け、次々と集結していく。
ここに「黄巾の乱」が起こるのである。
第一話④
小説で楽しむ三国志
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