【若者に急増する境界知能とは?】
7人に1人の生きづらさを理解しよう!
ライフステージ別の支援事例
近年、メディアで「境界知能」という言葉が急速に注目を集めています。
これは、知能指数(IQ)が70~84の範囲にある人々を指し、知的障害と平均的な知能の間に位置する「グレーゾーン」とも呼ばれます。
この層は、人口の約14%、7人に1人という非常に高い割合を占めています。発達障害の割合(約6.5%)よりも大きいにも関わらず、これまで社会の関心は薄いものでした。
複雑化する現代社会の中で、この層の人々が直面する「生きづらさ」が顕在化し、「急増している」という認識が広がりつつあります。
一見すると「普通」に生活しているように見えるため、学校や職場で困難に直面しても、
- 努力不足
- 怠けている
と誤解されがちです。
この「見えにくい困難」こそが、現代社会における若者たちの自己肯定感を深く傷つけ、二次的な精神疾患や非行へとつながる大きな要因となっています。
そこで本記事では、若者に急増する境界知能と苦悩、ライフステージ別の支援事例を解説します。
境界知能の正体:知的障害と平均の「グレーゾーン」
境界知能は、正式には「境界線知的能力(Borderline Intellectual Functioning)」と呼ばれ、知能指数(IQ)によって定義されます。
| 分類 | 知能指数(IQ) | 公的支援の有無 | 抱える困難の性質 |
| 知的障害 | 70未満 | あり(障害者手帳、福祉サービス) | 日常生活や社会生活に著しい困難 |
| 境界知能 | 70〜84 | 原則としてなし(支援の空白地帯) | 軽度の学習困難、認知機能の弱さ、社会生活での慢性的な失敗 |
| 平均 | 85〜115 | なし | 特別の支援は不要 |
境界知能の人は、知的障害の基準(IQ 70未満)をわずかに上回るため、障害者手帳を取得できず、公的な支援の枠組みから漏れてしまうことが最大の問題です。
「普通」の集団に入れられ、周囲と同じレベルの成果を求められますが、認知機能の特性から期待に応えることができず、慢性的な失敗体験を重ねてしまいます。この状況は「支援の空白地帯」とも呼ばれ、若者たちの「生きづらさ」の根源となっています。
当事者が抱える「見えない困難」と心理的葛藤
境界知能を持つ人が抱える困難は、学習や日常生活の側面に、深い心理的な葛藤を生み出します。
日常生活と仕事における困りごと
当事者の経験談から、下記のような困難が報告されています。
- 認知機能の弱さ:先生や上司の口頭での指示が理解できない、仕事の手順がなかなか覚えられない、複雑な事務手続きや金銭管理が苦手。
- 運動・協調性の問題:ハサミがうまく使えない、スポーツでとんちんかんな動きになってしまうなど、不器用さが目立つ。
- コミュニケーションの困難:集団での会話になると、話の展開についていけず疎外感を抱く。日常的に接していない人とのコミュニケーションに過度に緊張してしまう。
- 経験の「リセット」:久しぶりに会う人との関係性が自分の中でリセットされ、次に会うまでに期間が空くと、また話すのに緊張する段階に戻ってしまう。
これらの困難は、周囲からは「努力不足」や「やる気がない」と誤解されがちです。特に、コミュニケーションや対人関係に苦しむ人が多く、仕事でもプライベートでも困りごとが次々と出てくるため、うつ病などの二次障害につながるリスクが非常に高くなります。
「普通」を演じることの疲弊と自己否定感
境界知能を持つ多くの若者は、周囲との違いを自覚しながらも、「普通」を演じようとします。
この「カモフラージュ」は、心身を深く疲弊させます。
「周囲からはおとなしくて無口な子だと思われていたようです。ただ、自分としては人と話さなければならない状況に緊張して無口になっているだけで、周りの人が見る自分と実際の自分との間にはギャップがあったように思います。」
努力しても結果が出ない経験が積み重なることで、
- 「自分はダメな人間だ」
- 「なぜみんなと同じようにできないのだろう」
という強い劣等感や自己否定感を抱くようになります。診断名がつかないことで、自分の困難を説明する言葉を持てず、孤立感を深めてしまうのです。
なぜ「急増」しているように見えるのか?社会とのミスマッチの拡大
境界知能を持つ人の割合は統計的に大きく変わっていませんが、境界知能の人の困難が「急増」しているように見えるには、社会構造の変化が深く関わっています。
現代社会の高度化と複雑化
現代社会は、情報化、IT化が進み、求められる能力が高度化しています。
- 情報処理能力の要求:複雑なマニュアルの理解、複数の情報源からの判断、IT機器の操作など、認知機能に高い負荷がかかります。
- コミュニケーションの複雑化:形式的な指示だけでなく、「空気を読む」「相手の意図を汲み取る」といった高度な非言語的・抽象的なコミュニケーション能力が重視されます。
- 単純作業の減少:認知機能の弱さをカバーできた定型的な仕事が減少し、臨機応変な対応が求められる仕事が増えています。
「ケーキの切れない非行少年たち」による可視化
児童精神科医の宮口幸治さんの著書『ケーキの切れない非行少年たち』は、境界知能の問題を社会に広く知らしめるきっかけとなりました。宮口さんは、非行少年たちの多くが、努力や根性の問題ではなく、認知機能の弱さを抱えていることを指摘しました。この書籍は、「問題行動」の背景にある生物学的な特性に光を当て、境界知能という存在の社会的な関心を一気に高めました。
ライフステージ別の支援事例:切れ目のないサポートへ
境界知能を持つ子ども・若者への支援は、ライフステージと「困り感」に合わせて、切れ目なく提供されることが理想です。公的機関だけでなく、NPOや民間企業が制度の隙間を埋める柔軟な支援を展開しています。
児童期(早期支援):土台作りと療育
児童期は、学習や社会生活の土台となる「認知機能」を強化する早期支援が重要です。
| 支援形態 | 団体・事業所例 | 主な支援内容・特徴 |
| 児童発達支援 | LITALICOジュニア | 個別指導を通じて、言葉の理解、手先の器用さ、感情コントロールなど、就学前に必要な基礎スキルをオーダーメイドで支援 |
| 放課後等デイサービス | コグトレ塾(日本COG-TR学会関連) | 宮口幸治さんが提唱する「コグトレ(認知機能強化トレーニング)」を軸に、見る・聞く・想像する力を鍛え、学習の土台作りを実施 |
| 受給者証の活用 | 自治体 | 境界知能であっても、医師の診断書や意見書により「療育の必要性」が認められ、受給者証が発行されてこれらのサービスを利用できる |
青年期・学生期:居場所づくりと就労準備
中学・高校・大学と進むにつれ、人間関係や進路の複雑さが増します。
- ガクプロ(株式会社Kaien):境界知能や発達障害の大学生・専門学校生を対象としたコミュニティ。就活準備、コミュニケーションの練習、仲間との交流の場を提供し、社会への移行を支援。
- NPO法人サンカクシャ:15歳〜25歳くらいの「親を頼れない若者」を対象に、境界知能等の特性を考慮した伴走支援。シェアハウス、居場所、就労体験をパッケージで提供し、孤立を防ぐ。
成人期・就労:特性に合った自立支援
社会人として自立する段階では、特性に合った仕事選びと、二次障害の予防が中心になります。
| 支援機関 | 具体的な事例 | 支援の内容 |
| 就労移行支援事業所 | Kaien LITALICOワークス |
境界知能の特性(マルチタスクの苦手さ等)を考慮した職種提案や、職場での配慮事項の整理を支援。 |
| 認定NPO法人Homedoor | アンドベース | 境界知能を含む「生きづらさ」を抱える若者向けに、宿泊施設とセットで就労体験や生活再建を支援。 |
| 医療機関(専門外来) | 横浜市立大学附属病院 | 境界知能に特化した評価や、コグトレを用いたリハビリテーションを実施。 |
| 医療機関(専門外来) | 昭和大学附属烏山病院 | 成人発達障害専門外来にて、境界知能が併存するケースの診断とリハビリを提供。 |
公的相談窓口(全世代共通)
障害者手帳の有無に関わらず、困りごとがあれば相談できる公的な窓口も存在します。
- 発達障害者支援センター:確定診断がなくても、特性による困りごとがあれば相談可能。
- 障害者就業・生活支援センター:就労と生活の両面からサポート。手帳なしでも利用できる場合がある。
- 若者サポートステーション(サポステ):働くことに悩む若者のための相談窓口。
周囲に求められる「伴走型支援」のヒント
境界知能を持つ人への支援は、「努力」を強いるのではなく、特性を理解し、環境を調整することが鍵になります。当事者の声から、周囲に求められる具体的な関わり方のヒントを学びます。
「否定しない」姿勢と「一緒に考える」伴走
重要なのは、本人の困りごとを「努力不足」や「甘え」と決めつけず、受け止める姿勢です。
- 指示の具体化と可視化:口頭での指示は抽象的になりがちです。指示は一度にひとつにし、チェックリストや図、写真などを使って視覚的に具体化することが効果的です。
- 「なぜできないか」を一緒に探る:「どうすればできるか」を一方的に教えるのではなく、「なぜここでつまずくのだろう?」という視点を持ち、本人と一緒に解決策を探る「伴走型支援」が求められます。
- 強みに目を向ける:苦手なことばかりに注目するのではなく、本人が得意なことや、興味を持って取り組める分野を見つけ、それを活かせる環境を整えることが、自己肯定感を育む上で極めて重要です。
支援のグラデーションと社会の意識改革
境界知能の問題は、「個人の問題」ではなく、「社会とのミスマッチ」の結果です。
抱えている困難を解消し、誰もが生きやすい社会を築くためには、下記の視点が必要です。
- 「診断」よりも「困りごと」に焦点を当てる:公的な制度の枠組みを超え、実生活での困難をベースに支援を組み立てる。
- 環境調整の徹底:職場や学校に対し、指示の出し方や作業工程の工夫(指示の視覚化、作業の細分化など)を具体的にアドバイスする。
- 居場所の確保:「自分だけではない」と思えるコミュニティを提供し、二次障害を防ぐ。
「普通」の基準を緩め、多様な特性を持つ人々が、それぞれのペースで社会に参加できるようなインクルーシブな環境を整備することが、現代社会の責務です。
障害者福祉サービスを利用している私
うつ病を患い、会社を退職した私は、主治医に相談して、自立支援と障がい者手帳を取得し、就労継続支援B型事業所に通所しています。
私が通所する「でじるみ愛知扶桑」では、
- イラストやグラフィックデザイン
- 動画編集
- Webメディア運営
などを学ぶことができます。
私はグラフィックデザインとWebメディア運営(事業所のブログ記事作成)をしています。
これまで、ロゴ制作、広告看板や名刺デザインなどに取り組みました。
社会との接点が無くなってしまった私ですが、社会復帰に向けて、日々活動しています。
でじるみ愛知扶桑を運営している株式会社Use Upでは、放課後等デイサービスと児童発達支援事業を行っており、私も間接的に関わるようになりました。
いろいろな世代の障がいを持った人や支援する人たちと活動を共にしている私は、支援される側から支援する側になりたいと思うようになりました。
希望が叶うかは分かりませんが、障がい支援や問題を抱える若者について学びながら、ブログに取り上げて、発信していきます。





閲覧ありがとうございました。
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中年独身男のお役立ち情報局
Friends-Accept by 尾河吉満
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