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障害者1000万人時代!精神障害者の「働きたい」を支えるIPS就労支援

障害者1000万人時代!精神障害者の「働きたい」を支えるIPS就労支援 資格とビジネス教養

障害者1000万人時代!
障害者の「働きたい」を支えるIPS就労支援


日本で障害を持つ人の数は年々増加、現在では1000万人を超えていると言われています。
これは、国民の約10人に1人が何らかの障害を抱えていることになり、社会全体で障害のある人への理解と支援を深めることが喫緊の課題となっています。
 
特に、私のような精神障害を持つ人にとって、社会参加、「働く」ことは、経済的な自立だけでなく、自己肯定感の向上や社会とのつながりを感じる上で非常に重要な意味を持ちます。
精神障害を持つ人が就労する上で、
  • 病状の管理、
  • 職場での人間関係
  • 周囲の理解不足
  • 適切な支援の不足
など、様々な障壁に直面することが少なくありません。
 
従来の就労支援では、これらの課題に十分に対応しきれないケースが存在し、精神障害を持つ方々が希望する形で社会参加を果たすことが難しいのが現状です。
近年注目を集めているのが「IPS(Individual Placement and Support)就労支援」です。
 
IPSは、精神障害を持つ方々が「働きたい」という希望を現実のものとするための、画期的なアプローチとして期待されています。
 
本記事では、IPS就労支援の概要、特徴、効果、日本における現状と課題を掘り下げていきます。
 
IPS(Individual Placement and Support)就労支援は、1990年代前半にアメリカで開発された、精神疾患・精神障害を持つ人々を対象とした個別型就労支援モデルです。
日本では「個別就労支援プログラム」や「援助付き雇用」とも呼ばれ、一人ひとりのニーズに合わせたきめ細やかな支援が特徴です。

基本概念と歴史

IPSの根底にあるのは、「本人に『働きたい』という希望があれば、誰でも一般職に就くことができる」という強い信念です。
 
従来の就労支援では、就職前に職業訓練や病状の安定を求める「Train then Place(訓練してから就職)」のアプローチが主流でした。
 
IPSはこれとは異なり、「Place then Train(まず就職、それから訓練)」という逆転の発想に基づいています。
 
長期的な準備期間を設けず、利用者の希望に基づいて速やかに一般企業への就職活動を開始し、就職後に必要な訓練やサポートを継続的に提供するのです。
精神障害を持つ人が就労を通じて得られる恩恵を最大限に活かすことを目的としています。
 
就労は単なる経済的自立だけでなく、自己肯定感の向上、社会とのつながりの回復、そして症状の安定にも寄与することが多くの研究で示されています。
 
IPSは、このような就労の多面的な価値を重視し、利用者の「働きたい」という純粋な希望を何よりも大切にしています。
 

従来の就労支援との違い

IPS就労支援が従来の支援と大きく異なる点は、「個別性」と「統合性」にあります。
 
従来の支援が画一的なプログラムを提供しがちであったのに対し、IPSは利用者一人ひとりの
  • 希望
  • スキル
  • 興味
  • 強み
  • 困難さ
を詳細に把握し、それに合致する仕事や職場を共に探します。
 
症状の重さや障害の有無によって対象者を限定せず、本人の「働きたい」という意思を最優先する点が、IPSの最も革新的な側面と言えます。
就労支援専門員が、
  • 精神科医
  • 看護師
  • ソーシャルワーカーなどの医療従事者
  • 生活支援員といった福祉の専門家
と密接に連携する「多職種連携」を重視しています。
 
就労と生活、医療が一体となった包括的な支援が実現され、利用者が抱える様々な課題に横断的に対応することが可能になります。
 
従来の支援が就労支援と医療・福祉支援が分断されがちであった点とは対照的です。
 

IPSモデルの8つの原則

IPSモデルは、その効果を最大限に引き出すために、8つの原則に基づいて実施されます。
IPSが単なる就労支援の手法ではなく、精神障害を持つ人々のエンパワメントを促しています。
 
  1. 働きたい全ての精神障害者が対象:準備状況や症状の安定性に関係なく、働きたいという希望があれば誰でも利用可能です。障害の有無や程度で支援の対象を限定しないという、IPSの包括的な姿勢を表しています。

  2. 就労支援と生活支援をセットにしたサービス:就労支援専門スタッフが生活支援や医療支援の専門家とチームを組み、利用者の生活全体をサポートします。就労は生活の一部であり、両面からの支援が不可欠であるという考えに基づいています。

  3. 競争的雇用が目標:一般企業での就労を目指します。障害を持つ人々が社会の主流の中で活躍できる機会を提供することを意味します。

  4. 社会保障の相談:就労に伴う社会保障制度(障害年金、生活保護など)の変更や、それに伴う経済的な影響について、専門的な知識に基づいて相談に応じ、適切な情報提供や手続きの支援を行います。経済的な不安を軽減し、安心して就労に踏み出せるようサポートします。

  5. 迅速な求職活動:長期間の準備期間を設けず、速やかに求職活動を開始します。「Place then Train」のアプローチを具体化したもので、就労へのモチベーションを維持し、早期の社会参加を促します。

  6. 個別の職業選択:利用者の希望、スキル、困難さを考慮した個別対応を行います。画一的な職種を押し付けるのではなく、一人ひとりの強みや興味を活かせる仕事を見つけることを重視します。
  7. 継続的な支援:就職後も継続的にサポートを提供します。就職はゴールではなく、新たなスタートであるという認識のもと、職場への定着を支援し、長期的なキャリア形成をサポートします。

  8. 統合的なサービス:医療・福祉・就労支援が連携したサービス提供を行います。利用者の健康状態、生活状況、就労状況が密接に関連しているという理解に基づき、各分野の専門家が協力して支援にあたることを意味します。

障害者1000万人時代!精神障害者の「働きたい」を支えるIPS就労支援

 

これらの原則は、IPSが精神障害を持つ人々の就労を単なる「仕事探し」として捉えるのではなく、利用者の人生全体を豊かにするための包括的なプロセスとして位置付けています。
 
IPSは、障害を持つ人々が社会の一員として活躍できる可能性を最大限に引き出すための強力なモデルです。
 

IPS就労支援の特徴と効果:日本における高い有効性

IPS就労支援は、独自の支援アプローチと原則により、精神障害を持つ人々の就労に効果を発揮しています。ここでは、具体的な支援内容と、それがもたらす成功事例、そして日本における有効性について見てみましょう。

具体的な支援内容

IPS就労支援では、単に仕事を紹介するだけでなく、利用者が就労を通じて自立し、充実した生活を送れるよう、多岐にわたる具体的な支援が行われます。
  • 迅速な求職活動IPSの最大の特徴の一つは、職業準備性を高めるための長期的な訓練期間を設けず、利用者の希望に基づいて速やかに一般企業への就職活動を開始する点で、「Place then Train(まず就職、それから訓練)」というアプローチに基づいています。利用者の就労への意欲が高い時期を逃さず、早期に実際の職場環境に身を置くことで、実践的なスキル習得と自信の醸成を促します。

  • 個別化された職業選択:利用者一人ひとりの希望、スキル、興味、強み、そして困難さを詳細に把握し、それに合致する仕事や職場を共に探します。症状の重さや障害の有無によって対象者を限定せず、本人の「働きたい」という意思を最優先します。個別化されたアプローチにより、利用者は自分に合った仕事を見つけやすくなり、就労後のミスマッチを防ぐことができます。

  • 職場での継続的なサポート:就職はゴールではなく、新たなスタートです。IPSでは、就職後も職場への定着を支援するために継続的なサポートを提供します。これには、職場での人間関係の調整、業務内容の適応支援、症状管理に関する助言などが含まれます。必要に応じて、雇用主や同僚への精神障害に関する理解促進のための働きかけや、合理的配慮の提案なども行い、利用者が安心して働き続けられる環境を整えます。

  • 多職種連携による包括的支援:就労支援専門員が、精神科医、看護師、ソーシャルワーカーなどの医療従事者や、生活支援員といった福祉の専門家と密接に連携し、利用者の生活全体をサポートします。これにより、就労と生活、医療が一体となった包括的な支援が実現され、利用者が抱える様々な課題に横断的に対応することが可能になります。例えば、体調の急変時には医療機関と連携し、生活上の困りごとがあれば福祉サービスにつなぐなど、切れ目のない支援を提供します。

  • 社会保障制度に関する相談:就労に伴い発生する社会保障制度(障害年金、生活保護など)の変更や、それに伴う経済的な影響について、専門的な知識に基づいて相談に応じ、適切な情報提供や手続きの支援を行います。経済的な不安を軽減し、安心して就労に踏み出せるようサポートすることで、利用者の自立を力強く後押しします。
障害者1000万人時代!精神障害者の「働きたい」を支えるIPS就労支援
 

成功事例と効果

IPSモデルは、従来の就労支援と比較して高い就労率を達成していることが多くの研究で示されています。成功事例には、下記のような特徴が挙げられます。
  • 一般就労への高い移行率:精神障害を持つ人々が、IPSの支援を通じて一般企業での競争的雇用に就き、長期的に定着している事例が多数報告されています。これは、IPSが「訓練してから就職」ではなく「まず就職、それから訓練」という実践的なアプローチを取ることで、利用者が早期に職場環境に適応し、必要なスキルを身につけられるためと考えられます。

  • 生活の質の向上:就労を通じて経済的な自立が進むだけでなく、社会参加の機会が増え、自己肯定感の向上や症状の安定にも寄与しています。仕事を持つことで生活リズムが整い、社会とのつながりを感じることで、精神的な健康状態が改善されるケースも少なくありません。

  • スティグマの軽減:雇用主や社会全体が精神障害者に対する理解を深め、偏見が軽減されるきっかけとなることもあります。IPSの支援者が企業と連携し、精神障害に関する正しい知識を提供することで、職場の理解が深まり、よりインクルーシブな職場環境の構築に貢献します。
 

日本における有効性

IPS就労支援は、日本においてもその有効性が確認されています。複数の研究や報告で、下記の点が示されています。
  • 高い就労率と定着率:日本においても、IPSモデルを利用した精神障害者の就労率は、従来の就労支援プログラムと比較して高いことが報告されています。また、就職後の職場定着率も向上する傾向にあります。

  • 経済的自立と生活の質の向上:日本の精神障害者においても、IPSによる就労支援が経済的自立を促し、生活の質の向上に寄与することが示されています。

  • スティグマの軽減:雇用主や社会全体が精神障害者に対する理解を深めるきっかけとなり、偏見の軽減にも寄与すると考えられています。

  • 国際的なエビデンスIPSは、世界各国で無作為化比較試験によってその効果が検証されており、日本においてもその知見が適用可能であることが示唆されています。これは、IPSが文化や社会制度の違いを超えて普遍的な効果を持つことを示唆しています。

 

これらのことから、IPS就労支援は日本においても精神障害者の就労を促進し、社会参加を支援するための非常に有効な手段であると言えます。その効果は、単に就職率の向上に留まらず、利用者の生活全体の質の向上、ひいては社会全体の包容力の向上にも貢献しています。
 

日本の現状と課題:普及に向けた道のり

IPS就労支援は、その高い有効性から世界中で注目されていますが、日本における普及にはいくつかの課題が存在します。日本の障害者数が1000万人を超える中で、IPSのような効果的な支援モデルがより多くの人々に届くためには、これらの課題を克服していく必要があります。

事業所の存在数

日本のIPS就労支援事業所の数は、少ないのが現状です。
 
2025年7月時点の報道によると、
 
制度とのミスマッチから国内の実施機関は20~30カ所程度
 
と報じられています。
 
就労移行支援事業所や就労継続支援事業所といった既存の障害福祉サービス事業所が全国に多数存在する現状と比較すると、IPSモデルを専門的に実践している機関はまだ限られています。
JIPSA(日本IPS協会)のウェブサイトでは、IPSを実践するチームが紹介されていますが、具体的な総数は明記されていません。
 
IPSが特定の制度に紐づくものではなく、既存の障害福祉サービス事業所や医療機関などがIPSモデルを導入しているケースが多いため、統計が取りにくいという背景もあります。
 
IPSの恩恵を受けられる精神障害者の数は、その潜在的なニーズに比べてまだまだ少ない状況です。
 

普及における課題

IPS就労支援の普及と質の維持には、いくつかの重要な課題が存在します。
  • 専門人材の育成IPSの原則に基づいた質の高い支援を提供できる就労支援専門員の育成が不可欠です。単に仕事を紹介するだけでなく、利用者の希望を尊重し、多職種と連携しながら継続的なサポートを行うため、高度な専門性と柔軟な対応力が求められます。多職種連携を円滑に進めるためのコミュニケーション能力や、個別のニーズに対応できる柔軟性も求められますが、こうした専門人材の育成には時間とコストがかかります。

  • 財源の確保と制度化IPSの継続的な実施には安定した財源が必要です。現状では、既存の障害福祉サービス制度の中でIPSモデルを実践している事業所が多いですが、IPSの特性に合わせた財源の確保や、より効果的な制度設計が求められます。また、既存の就労支援制度との整合性を図りながら、IPSモデルをより広く普及させるための制度的な枠組みの整備も課題となっています。IPSの成果を適切に評価し、それが報酬に結びつくような仕組み作りも重要です。

  • 医療機関との連携強化IPSは医療機関との密接な連携が成功の鍵となりますが、医療機関側のIPSに対する理解や協力体制の構築が十分でない場合もあります。精神科医療の現場において、就労支援が治療の一環として位置づけられ、医療従事者へのIPSの啓発や、連携を促進するための仕組み作りが重要です。医療と就労支援が一体となることで、利用者の回復と社会参加をより強力に後押しすることができます。

  • フィデリティの維持IPSの有効性を保つためには、8つの原則が忠実に守られているかを確認する「フィデリティ調査」が重要です。フィデリティとは、IPSモデルが本来持つ効果を発揮するために必要な要素が、実際に支援の現場でどの程度実践されているかを示す指標です。
    フィデリティを維持し、質の高い支援を全国的に展開していくことは容易ではありません。支援の質を担保するための継続的な研修やスーパービジョン、評価体制の構築が求められます。

 

これらの課題は、IPS就労支援が日本社会に根付き、より多くの精神障害を持つ人々の希望を叶えるための重要なステップとなります。関係機関や社会全体が協力し、これらの課題に積極的に取り組むことで、IPSの普及はさらに加速するでしょう。
 

IPS就労支援と他の就労支援サービスとの比較

精神障害を持つ人が就労を目指す際、IPS就労支援以外にも、就労移行支援や就労継続支援(A型・B型)といった様々な障害福祉サービスが存在します。それぞれのサービスには特徴があり、利用者の状況や目標に応じて最適な選択をすることが重要です。ここでは、これらのサービスとIPS就労支援を比較し、その違いを明確にしていきます。

就労移行支援

就労移行支援は、一般企業への就職を目指す障害のある人を対象に、就職に必要な知識やスキル向上のための訓練、職場実習、就職活動のサポート、就職後の職場定着支援を行う障害福祉サービスです。利用期間は原則2年間と定められており、この期間内に集中的な支援を受け、一般就労を目指します。
  • 目的:就労移行支援は一般就労を目指す点ではIPSと共通していますが、就職前の訓練に重点を置く傾向があります。IPSは「Place then Train(まず就職、それから訓練)」というアプローチを重視し、早期の一般就労を目指します。

  • 支援期間:就労移行支援は原則2年間という期間が設定されていますが、IPSは就職後も継続的なサポートを提供し、期間の定めがありません。

  • 対象:精神障害者だけでなく、身体障害者、知的障害者、発達障害者など、幅広い障害種別が対象となります。IPSは主に精神障害者を対象としています。

  • 雇用契約:就労移行支援の利用中は雇用契約を結びません。
 

就労継続支援A型

就労継続支援Aは、一般企業での就労が困難な障害のある人に対し、雇用契約を結んだ上で、働く場と必要な訓練を提供するサービスです。利用者は事業所と雇用契約を結ぶため、最低賃金が保障され、給与が支払われます。一般就労への移行を目指す方もいますが、長期的にA型事業所で働くことも可能です。
 
  • 雇用契約:就労継続支援A型は雇用契約を結びますが、IPSは一般企業での競争的雇用を目指すため、IPS事業所と雇用契約を結ぶことはありません。

  • 目的A型は雇用契約に基づく就労機会の提供が主目的の一つですが、IPSはあくまで一般企業への就労と定着を目的とします。

  • 賃金A型は最低賃金が保障されますが、IPSは一般企業での就労となるため、その企業の賃金体系に基づきます。
 

就労継続支援B型

就労継続支援Bは、一般企業での就労や就労継続支援A型事業所での雇用契約を結ぶことが困難な障害のある人に対し、雇用契約を結ばずに、働く場と必要な訓練を提供するサービスです。利用者は「工賃」という形で報酬を受け取ります。利用期間に制限はなく、比較的自由に利用できるのが特徴です。
  • 雇用契約:就労継続支援B型は雇用契約を結びません。IPSは一般企業での競争的雇用を目指します。

  • 目的B型は働く場と訓練の提供が主目的であり、一般就労への移行は必須ではありません。IPSは一般就労を明確な目標とします。

  • 賃金B型は「工賃」で、最低賃金は保障されません。IPSは一般企業での就労となるため、その企業の賃金体系に基づきます。
 

それぞれのサービスの役割

サービス名 IPS就労支援 就労移行支援 就労継続支援A型 就労継続支援B型
目的 一般企業での競争的雇用と定着 一般企業への就職と定着 雇用契約に基づく働く場の提供、一般就労への移行 雇用契約なしで働く場の提供、訓練
雇用契約 なし(一般企業と直接) なし あり(事業所と) なし
賃金/工賃 企業の賃金体系 なし 最低賃金保障 工賃
支援期間 制限なし(継続支援) 原則2年 制限なし 制限なし
主な対象 精神障害者 幅広い障害 一般就労が困難な障害者 一般就労・A型が困難な障害者
特徴 「Place then Train」、多職種連携、個別化された伴走型支援 就職前の訓練、就職活動支援 雇用契約あり、給与支給 雇用契約なし、工賃支給、比較的自由な利用

 

これらのサービスは、それぞれ異なる役割と目的を持っています。IPS就労支援は、特に精神障害を持つ方々が「働きたい」という強い希望を持ち、一般企業での就労を強く志向する場合に、その効果を最大限に発揮するモデルと言えるでしょう。
就労移行支援は就職前の準備をじっくり行いたい方、就労継続支援A型・B型は雇用契約の有無や体調に合わせて働くことを希望する方に適しています。
利用者は自身の状況に応じて、これらのサービスの中から最適なものを選ぶことが、就労成功への鍵となります。
 
そして、それぞれのサービスが連携し、利用者のニーズに合わせた柔軟な支援を提供できる社会が、真にインクルーシブな社会と言えるでしょう。
 

誰もが「働きたい」を叶えられる社会へ

日本の障害者数が1000万人を超える現代で、私のような精神障害を持つ人が社会参加し、自分らしい働き方を見つけることは、個人の尊厳に関わるだけでなく、社会全体の活性化にとっても不可欠な要素です。IPS(Individual Placement and Support)就労支援は、まさにこの喫緊の課題に応える、強力かつ有効な支援モデルとして、その重要性を増しています。
IPSは、精神障害を持つ人々の「働きたい」という純粋な希望を何よりも尊重し、その実現に向けて個別化された伴走型支援を提供します。従来の就労支援とは一線を画し、「まず就職、それから訓練」という実践的なアプローチを取り、医療・福祉・就労支援の専門家が密接に連携することで、利用者の生活全体を包括的にサポートします。この独自のモデルにより、IPSは高い就労率と職場定着率を実現し、利用者の経済的自立、生活の質の向上、そして社会的なスティグマの軽減に大きく貢献しています。
日本においても、IPSの有効性は多くの研究で確認されており、その普及が待望されています。しかし、現状ではIPSを専門的に実践する事業所の数はまだ少なく、専門人材の育成、安定した財源の確保と制度化、医療機関との連携強化、支援の質の維持といった課題が山積しています。これらの課題を克服し、IPSがより広く社会に浸透していくためには、行政、医療機関、福祉サービス、企業、そして地域社会が一体となって取り組む必要があります。
誰もがその能力を発揮し、社会の一員として活躍できるインクルーシブな社会の実現は、私たち共通の目標です。IPS就労支援は、その目標達成に向けた重要な一歩となるでしょう。精神障害を持つ方々が「働きたい」という希望を叶え、充実した人生を送れるよう、IPSのさらなる発展と普及に期待が寄せられています。
 

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