急増する退職代行サービス利用の実態と今後の展望!
退職代行サービスとは、労働者が自ら会社に退職の意思を伝えることなく、専門業者が代わりに退職の意思表示や手続きを行うサービスです。 2010年代後半から注目を集め始め、現在では多くの企業が参入し、市場が急成長しています。
退職代行サービスの基本的な仕組み
退職代行サービスの利用者は、次のような流れで退職手続きを進めます。
- サービス提供会社に依頼(主にLINEやWeb経由)
- 利用者の情報(会社名、連絡先、退職希望日など)を提供
- 退職代行業者が会社に連絡して退職の意思を伝達
- 必要に応じて退職手続きのサポートや会社とのやり取りを代行
- 退職完了・確定
退職代行サービスの種類
退職代行サービスは主に3つのタイプに分類されます。
民間企業型
一般企業が運営するサービス。退職の意思伝達を代行するが、法的交渉はできない。比較的安価で即日対応が可能なケースが多い。
労働組合型
労働組合が運営するサービス。団体交渉権を持つため、有給休暇の取得や未払い賃金の請求なども可能。民間よりやや高額。
弁護士型
弁護士が運営するサービス。法的な対応が必要な場合に強み。未払い賃金請求や損害賠償請求も可能だが、費用は最も高額。
退職代行サービスの市場動向と利用者数の推移
退職代行市場の成長
退職代行サービスの市場規模は年々拡大しており、2020年の約20億円から2023年には約40億円へと倍増し、2025年には60億円規模に達すると予測されています。
退職代行サービス市場規模の推移
2020年 | 約20億円 |
2021年 | 約25億円 |
2022年 | 約30億円 |
2023年 | 約40億円 |
2025年(予測) | 約60億円 |
過去10年間の利用者数の推移
マイナビの調査によると、2024年上半期(1月~6月)に退職代行サービスを利用して退職した人がいた企業は23.2%に達していることが明らかになりました。
年度 | 退職代行利用率 |
---|---|
2021年 | 16.3% |
2022年 | 19.5% |
2023年 | 19.9% |
2024年(上半期) | 23.2% |
退職代行モームリの利用実績データ
業界最大手の退職代行モームリ
退職代行モームリの利用者データ
- 累計利用者数:16,000名以上
- 複数回利用された企業数:1,500社以上
- 最も多く利用された企業:人材派遣会社
- 新卒社員の利用数:1,800名以上
- GW明けの1日の最高依頼数:250件以上
業界の変化と新規参入
2017年頃から退職代行サービスが注目を集め始め、現在では100社以上の企業がこの市場に参入していると言われています。業界最大手の退職代行モームリはシェア7割程度を占めていると推測されており、年商は約4億円と見積もられています。
退職代行サービス利用者の年齢層と属性
年齢層別の利用者割合
退職代行サービスの利用者は若年層に集中しています。マイナビの調査によると、1年間に転職した人のうち、退職代行サービスを利用した人の割合は下記のようになっています。
年代別・退職代行サービス利用率
20代 | 18.6% |
30代 | 17.6% |
40代 | 17.3% |
50代 | 4.4% |
20代前半 | 13% | 80% |
20代後半 | 20% | |
30代前半 | 27% | |
30代後半 | 20% | |
40代以上 | 20% |
男女比と地域分布
退職代行サービスの利用者は、男女比においては大きな差が見られません。ただし、サービスによって若干の傾向があります。
サービス名 | 男性利用者 | 女性利用者 |
---|---|---|
退職代行モームリ | 52.3% | 47.7% |
セルフ退職ムリサポ! | 約40% | 約60% |
退職代行業界平均 | 55% | 45% |
地域別では、大都市圏での利用が多く、東京都が最も高い利用率を示しています。若年層の多い都市部を中心に利用が広がっているようです。
職種別・業種別の利用率
退職代行サービスの利用率は職種によって大きく異なります。対人サービス業や高ストレス職種で利用率が高い傾向にあります。
職種別の利用率
- 営業職:25.9%
- クリエイター・エンジニア:18.8%
- 企画・管理・事務:17.0%
- 建設・土木・現場作業:10.2%
- 製造(工業製品):8.0%
- 配送・ドライバー:7.8%
業種別の利用率
- 理美容・洗濯業:33.3%
- 金融・保険・コンサルティング:31.4%
- IT・通信・インターネット:29.8%
- 小売業(百貨店含む):26.6%
- メーカー(製造業):25.4%
- 宿泊業(ホテル・旅館など):23.5%
一方、製造業・ドライバーでは比較的退職しやすい環境があるため、利用率は低い傾向です。
なぜ退職代行サービスを利用するのか
退職代行サービスを利用する主な理由
マイナビの調査によると、退職代行サービスを利用した理由として、下記の項目が挙げられます。
退職代行サービスを利用した理由
- 退職を引き留められた(引き留められそうだった)から・・・40.7%
- 自分から退職を言い出せる環境でなかったから・・・・・・・32.4%
- 退職を伝えた後にトラブルになりそうだったから・・・・・・23.7%
退職を言い出せない心理的要因
退職を自分で言い出せない具体的な理由として、下記のような心理的要因が挙げられます。
- 上司との関係性の問題(48.2%)
- パワハラ・モラハラの存在(37.6%)
- 人手不足による罪悪感(35.9%)
- 退職手続きの複雑さへの不安(29.3%)
- 同僚への負担増加の懸念(27.8%)
新卒社員の退職代行利用
新卒社員の退職代行利用も近年増加しています。退職代行モームリの2024年度新卒1,814名分のデータによると、入社直後の4月から6月にかけての利用が最も多く、退職理由としては「入社前のイメージと実際の勤務状況や職場環境とのギャップ」が約半数を占めています。
新卒社員の退職代行利用の特徴
- 利用が最も多い月:5月(298名)
- 4~6月の主な理由:実態とのギャップ(約50%)
- 7月以降の主な理由:いじめやパワハラなどの人間関係(1位)
- GW明けの新卒退職比率:13%(2024年)
退職代行サービスのメリットとデメリット
利用者にとってのメリット
精神的負担の軽減
退職の申し出による精神的ストレスを避けることができます。利用者の78.6%が「精神的負担が軽減された」と回答しています。
引き留めの回避
上司からの引き留めや説得を受ける必要がなく、確実に退職の意思を伝えることができます。
即日退職の実現
多くのサービスが即日対応可能で、当日中に退職の意思を伝えることで、すぐに会社に行かなくて済む場合もあります。
法的サポート(弁護士型、労働組合型の場合)
弁護士型や労働組合型の場合、有給休暇の取得や未払い賃金の請求なども含めた法的サポートを受けられます。
利用者にとってのデメリット
費用負担
退職代行サービスには費用がかかります。民間企業型で2〜5万円、労働組合型で3〜6万円、弁護士型で8〜15万円程度の費用が必要です。
会社との関係悪化
退職代行を利用すると会社との関係が悪化するリスクがあり、同業界への転職時に影響する可能性があります。
手続き上の制限
社会福祉士の調査によれば、会社の制度(傷病手当金の申請、年次有給休暇の取得、最後の給料や退職金の受け取りなど)の利用に制限が出る可能性があります。約6割の会社は「退職は受理するが、それ以外については本人と話をしないと受理できない」という対応をとると言われています。
退職癖がつく可能性
退職代行を使うことで、思い立ったらすぐに仕事を辞める「退職癖」がつく可能性があるという指摘もあります。
企業側から見たメリットとデメリット
企業側からみた退職代行サービスの影響も考える必要があります。
企業側のメリット
- 退職意思が明確で、不必要な引き留め交渉が省ける
- 退職手続きが整理されて進む可能性がある
- 職場環境改善のための気づきになる場合もある
企業側のデメリット
- 突然の退職による業務の混乱
- 引継ぎができず、情報が途絶える
- 退職理由が明確にならない場合があり、職場改善に活かせない
- 他の従業員のモチベーションに悪影響を与える可能性
退職代行の成功事例と失敗事例
退職代行の成功事例
【事例1】パワハラからの解放
30代男性、IT企業勤務の事例です。上司からの度重なるパワハラで精神的に追い詰められ、自ら退職を切り出すことができない状況でした。退職代行サービスを利用したことで、上司との直接対面なしに退職手続きを完了。精神的な負担から解放され、転職活動を開始することができました。
【事例2】新卒でのミスマッチ解消
20代女性、金融機関勤務の新卒社員の事例です。入社前のイメージと実際の業務内容が大きく異なり、長時間労働も続いていました。退職の意思を伝えると「新卒はすぐに辞めるべきではない」と強く引き留められ、退職代行サービスを利用。スムーズに退職できたことで、自分に合った仕事を探す時間を確保できました。
【事例3】有給休暇取得と未払い残業代請求の成功
40代男性、小売業勤務の事例です。労働組合型の退職代行サービスを利用し、退職の意思伝達だけでなく、未消化の有給休暇の取得と未払いだった残業代の請求も実現。自分一人では交渉が難しかった問題も解決でき、納得のいく形で退職できました。
【事例4】転職先確保後の円滑な移行
30代女性、営業職の事例です。転職先が決まった後、現職の引き留めが強く、退職日の調整が難航していました。退職代行サービスを利用することで適切な退職日を設定し、スムーズに次の職場へ移行することができました。
退職代行の失敗事例と注意点
【失敗事例1】詐欺的な業者への依頼
支払い後に連絡が取れなくなる、退職の意思を伝えていないなど、悪質な業者に依頼してしまうケースがあります。事前に業者の評判や実績を確認することが重要です。
【失敗事例2】必要書類が入手できない
退職代行を利用した結果、会社が退職手続きに必要な書類(離職票など)の発行を遅らせたり、直接受け取りを要求するケースもあります。民間型の退職代行では対応できないこともあります。
【失敗事例3】未払い給与や退職金の問題
退職は受理されたものの、未払い給与や退職金について会社が「本人と直接話し合う必要がある」として支払いを遅らせるケースもあります。弁護士型や労働組合型を選ぶべきケースでした。
【失敗事例4】非弁行為による法的トラブル
民間企業型の退職代行が法的交渉をしようとして「非弁行為」となり、会社側から拒否されるケースがあります。適切なサービスを選ぶことが重要です。
退職代行サービス選びで失敗しないためのポイント
- 運営元を確認する(民間企業、労働組合、弁護士)
- 口コミや評判をチェックする
- 明確な料金体系が提示されているか確認する
- 24時間対応や即日対応の有無を確認する
- 追加料金の有無を事前に確認する
- 自分の状況(未払い賃金の有無、有給休暇の消化希望など)に合ったサービスを選ぶ
退職代行サービスの法的問題と議論
退職代行サービスの法的位置づけ
退職代行サービスは新しいサービスであり、法的な解釈がまだ確立されていない部分があります。基本的に、退職の意思表示自体は誰が伝えても有効とされていますが、交渉などを含む場合には法的な問題が生じる可能性があります。
退職の意思表示は民法上の意思表示であり、本人に代わって第三者が伝えることも可能です。しかし、代理人として法律行為を行うには、弁護士資格が必要となる場合があります。
弁護士法との関係 – 非弁行為の問題
民間企業が運営する退職代行サービスが最も注意すべき法的問題は、弁護士法第72条に定められる「非弁行為の禁止」との関係です。
弁護士法(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)
第七十二条 弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。
民間企業型の退職代行サービスが「非弁行為」とならないよう、下記の点に注意する必要があります。
- 退職の意思表示の伝達にとどめ、法律的な交渉を行わない
- 有給休暇の取得や未払い賃金の請求など、交渉が必要な事項は扱わない
- 「代理人」として法律行為を行わない
労働組合型の退職代行サービスの法的位置づけ
労働組合が運営する退職代行サービスは、労働組合法に基づく「団体交渉権」を活用しているため、民間企業型よりも広い範囲のサービスを提供できます。
労働組合法(不当労働行為)
第七条 使用者は、次の各号に掲げる行為をしてはならない。 一 労働者が労働組合の組合員であること、労働組合に加入し、若しくはこれを結成しようとしたこと若しくは労働組合の正当な行為をしたことの故をもって、その労働者を解雇し、その他これに対して不利益な取扱いをすること又は労働者が労働組合に加入せず、若しくは労働組合から脱退することを雇用条件とすること。ただし、労働組合が特定の工場事業場に雇用される労働者の過半数を代表する場合において、その労働者がその労働組合の組合員であることを雇用条件とする労働協約を締結することを妨げるものではない。 二 使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由がなくて拒むこと。
法的問題に関する議論と今後の課題
退職代行サービスをめぐる法的議論としては、下記のような点が挙げられます。
退職の自由とその保障
憲法で保障された職業選択の自由(第22条)に基づき、労働者には退職の自由があります。退職代行サービスはこの権利行使を支援する側面がありますが、一方で「自己決定」の意義が薄れる懸念もあります。
「非弁行為」の線引きの曖昧さ
どこまでが単なる意思表示の伝達で、どこからが法律事務の代理になるのか、線引きが曖昧な部分があります。この点について今後さらなる法的整理が必要とされています。
労働組合としての実態
退職代行サービスのために形式的に作られた労働組合が、実質的な団体交渉権を持つのか疑問視する声もあります。実態のない「名ばかり労働組合」の問題が指摘されています。
法改正の可能性
退職代行サービスの普及に伴い、法的な整備や規制が進む可能性があります。特に利用者保護の観点から、一定の基準を設ける必要性が議論されています。
主要退職代行サービスの比較
おすすめの退職代行サービス一覧
主要な退職代行サービスの特徴、料金、対応範囲などを比較します。
サービス名 運営元 |
特徴 価格 |
対応範囲 |
---|---|---|
民間企業 |
業界最大手(シェア約7割) 正社員:27,000円 |
退職の意思伝達 退職日の調整 退職に関する相談 |
労働組合 |
後払い対応可能 24,000円 |
退職の意思伝達 退職日の調整 有給休暇取得交渉 未払い賃金請求 |
弁護士 |
弁護士が対応 55,000円〜77,000円 |
退職の意思伝達 退職日の調整 有給休暇取得交渉 未払い賃金請求 損害賠償請求 法的アドバイス |
民間企業 |
自分で退職する方法をサポート 15,000円 |
退職手続きの方法指導 退職理由の伝え方 退職に関する相談 |
退職代行ヒトヤスミ 民間企業 |
業界最安値クラス 16,500円〜 |
退職の意思伝達 退職に関する相談 |
退職代行Jobs 民間企業 |
労働組合と提携 27,000円 |
退職の意思伝達 退職日の調整 有給休暇取得交渉 (労働組合利用時) |
退職代行SAKURA 民間企業 |
弁護士監修サービス 9,900円〜19,800円 |
退職の意思伝達 退職に関する相談 法的アドバイス(限定的) |
退職代行サービスの選び方
自分に合った退職代行サービスを選ぶためのポイントを紹介します。
退職代行サービスの選び方フローチャート
- 法的トラブルがある?
- YES → 弁護士型
- NO → 次の質問へ
- 未払い賃金や有給消化の交渉が必要?
- YES → 労働組合型
- NO → 次の質問へ
- シンプルに退職の意思だけ伝えたい?
- YES → 民間型
- NO → 労働組合型または弁護士型
- 費用を抑えたい?
- YES → 民間型または労働組合型
- NO → 弁護士型も検討
- 即日対応を希望?
- YES → 民間型(24時間対応のサービス)
- NO → サービス内容重視で選択
退職代行サービスの利用の流れ
一般的な退職代行サービスの利用の流れは下記のようになります。
- STEP 1:問い合わせ・相談(電話・LINE・メールなど)
- STEP 2:申込み・契約(必要情報の提供)
- STEP 3:料金の支払い(クレジット・銀行振込など)
- STEP 4:会社への連絡(業者が退職の意思を伝達)
- STEP 5:退職完了・アフターフォロー(必要書類の受け取りなど)
退職代行業界の今後の展望
市場規模の予測
退職代行サービスの市場規模は、2020年の約20億円から2023年には約40億円へと倍増し、2025年には60億円規模に達すると予測されています。若年層を中心に認知度は高まっており、今後も成長が見込まれています。
退職代行サービス市場の成長予測
2023年 | 約40億円 | 前年比33%増 |
2024年(予測) | 約50億円 | 前年比25%増 |
2025年(予測) | 約60億円 | 前年比20%増 |
サービス内容の多様化と進化
退職代行業界では、基本的な退職の意思伝達だけでなく、サービス内容の多様化が進んでいます。今後は下記のような方向性での発展が予測されます。
転職支援との連携
退職代行と転職支援をセットで提供するサービスが増加すると予測されます。退職後のキャリア支援まで一貫してサポートする形が広まる可能性があります。
メンタルケアの充実
退職前後のメンタルケアや心理的サポートを提供するサービスが増えると予想されます。退職に伴う不安や悩みへの対応が重視されるでしょう。
法律サポートの強化
弁護士との連携を強化し、より法的なサポートを充実させるサービスが増えると考えられます。労働問題に特化した法的アドバイスの提供が重視されるでしょう。
企業側の対応変化
退職代行サービスの普及に伴い、企業側も対応を変化させていく可能性があります。
- 退職しやすい職場環境・文化の構築
- 退職手続きの簡素化・明確化
- 退職時の面談や引き継ぎ方法の見直し
- 退職代行を利用されないための職場環境改善
- 退職理由の分析と組織改善への活用
法整備と規制の可能性
退職代行サービスの利用拡大に伴い、今後は法的な整備や一定の規制が行われる可能性も考えられます。
世界との比較 – 退職代行は日本特有?
退職代行サービスの国際比較
退職代行サービスは主に日本で広まったサービスですが、近年は韓国など一部のアジア諸国でも類似のサービスが登場しています。
日本
退職代行サービスが最も発達し、100社以上のサービス提供企業が存在。若年層を中心に利用が広がり、市場は拡大を続けています。法的な整備はまだ発展途上です。
韓国
日本に次いで退職代行サービスが普及しつつある国です。日本と同様に、退職を言い出しにくい職場文化を背景に急速に広がっています。ただし、まだ日本ほど多様なサービスは登場していません。
欧米諸国
アメリカやヨーロッパでは、退職の自由が比較的尊重されており、専門的な退職代行サービスはほとんど見られません。労働問題は弁護士や労働組合が対応するのが一般的です。
なぜ日本で退職代行サービスが発達したのか
日本で退職代行サービスが発達した背景には、下記のような日本特有の事情があります。
日本の雇用慣行
終身雇用の名残や「会社に忠誠を尽くす」という価値観が残る日本では、退職を申し出ることが「裏切り」や「迷惑をかける行為」と見なされることがあります。
面と向かって言えない文化
日本の文化では、特に目上の人に対して否定的なことや自分の要求を直接伝えることを避ける傾向があります。退職という「No」を伝えることは精神的負担が大きいものです。
引き止め文化
日本企業では退職の意思を伝えると、強く引き止めるケースが多く見られます。複数回の説得や引き留め面談が行われることも珍しくありません。
労働者の権利意識
欧米に比べて労働者の権利意識が低い面があり、退職の自由が憲法で保障された権利であることを知らない人も少なくありません。
まとめ
退職代行サービスの現状と今後
退職代行サービスは、退職を言い出しにくい日本の職場文化を背景に急速に普及してきました。2023年6月以降の1年間で転職した人の16.6%が退職代行サービスを利用するなど、特に若年層を中心に利用が広がっています。
利用者の多くは「退職を引き留められる」「退職を言い出せる環境でない」「ハラスメントを受けている」といった理由で退職代行サービスを選択しています。サービスには民間企業型、労働組合型、弁護士型があり、それぞれに特徴とメリット・デメリットがあります。
市場規模は2025年に60億円に達すると予測されており、今後はサービス内容の多様化・専門化が進むと考えられます。一方で、法的な整備や一定の規制が行われる可能性もあります。
退職代行サービスの普及は、日本の労働環境や職場文化に課題があることを示しています。今後、企業側も退職しやすい環境づくりや職場改善に取り組むことが求められるでしょう。
退職を考えている人へのアドバイス
最後に、退職を考えている人へのアドバイスをまとめます。
- 自分で退職する可能性を検討する
可能であれば、まずは自分で退職の意思を伝えることを検討しましょう。円満に退職できれば、その後の手続きもスムーズに進む可能性が高まります。
- 状況に合った退職代行サービスを選ぶ
退職代行サービスを利用する場合は、自分の状況(未払い賃金の有無、有給休暇の消化希望など)に合ったサービスを選びましょう。
- 信頼できる業者を選ぶ
口コミや評判をチェックし、信頼できる退職代行業者を選びましょう。詐欺的な業者や非弁行為を行うリスクのある業者は避けるべきです。
- 退職後のキャリアプランを考える
退職前に次のキャリアプランや生活設計を考えておくことが重要です。退職後の空白期間をどう過ごすかも含めて計画を立てましょう。
- メンタルケアも忘れずに
退職のプロセスはストレスが多いものです。心身の健康を守るためにも、適切なメンタルケアを行いましょう。
退職代行サービスは、あくまでも退職という選択をサポートする手段の一つです。自分自身のキャリアや人生は自分で決める主体性を持ちながら、必要に応じてこうしたサービスを活用することが大切です。
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閲覧ありがとうございました。
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