第01話 いつまでも忘れられない想い人!
誰にでも、忘れられない人がいるのではないだろうか。
私にも、忘れることのできない「想い人」がいる。
私は、小学生時代を広島県三原市で過ごした。
私にとっては一番楽しかった時期だった。
小学5年生の時、転校してきたアイツに出逢った。
想い人。
好きで、ちょっかいを出す男子だった私なのだが、想いを伝えることは叶わなかった。
小学校卒業と同時に、父の仕事の関係で愛知に転校することになっていた私。
離れ離れになる悲しさから、アイツに何も伝えずに三原を去った。
愛知に転校して新しい友人は出来たのだが、アイツ以上に好きになる人とは巡り逢えなかった。
高校時代には三原に行き、小学生時代の友人に会いに行ったことがある。
その時、アイツを見掛けたのだが、声をかけることはできなかった。
のちに奇跡が起こる。
大学進学後、高校時代の友人2人と三原に旅行に行くことになった。
三原やっさ祭りを見に行った後、小学生当時に家族でよく行ったファミレスに入った。
アルバイトのウェイトレスに席を案内され、メニューに手を伸ばした時、あることに気付いた。
身長は私と同じぐらい、ショートヘアが少し伸びたヘアスタイル。
ウェイトレスの女性は・・・、アイツだった。
胸が高鳴り、張り裂けそうになりながら、ちらりとアイツを見ていた。
食事を済ませ、店を出ることになっても、アイツに声をかけられないでいた。
友人が側にいたからというのは言い訳で、私に勇気がなかった。
そして...、私はアイツに声をかけないまま、その店を出てしまった。
それ以後、アイツに逢うことはなかった。
逢うことが出来なくなった。
社会人になってからも一番楽しい時期を過ごした三原を幾度も旅行した。
でもアイツの家族は引っ越した後で、消息が分からなくなっていた。
それでも逢えるような気がして、逢いたいという気持ちから毎年三原を訪れていた。
町はどんどん変化し、私も歳を重ねた。
今年44歳を迎える盆休みは、出勤せざるを得ず、やっさ祭りを観に行くことが出来なかった。
盆休み後、振替休日が獲れ、私は誕生日を三原で過ごすことにした。
アイツに逢えるのではないかと期待していた。
しかし出逢うことは叶わなかった。
休職に入る2ヶ月前の8月、アイツの夢を頻繁にみるようになった。
何かあったのだろうか?
不安に感じながら、それでも消息の分からないアイツに連絡する手段はない。
「逢いたい」という強い気持ちと「逢えない」という現実の狭間で、悶々と過ごしていた。
会社に行って仕事し、家に帰ってネットを観たり、SNSをやるだけの毎日だった。
ただ、そんな生活が功を奏した。
ネットで探偵事務所の広告が目に入った。
何もできなかった自分をここで断ち切りたかった。
その思いで私は迷いもなく、探偵事務所に連絡し、相談に乗ってもらっていた。
正直、恥ずかしいという気持ちもある。
でもそれ以上にあいつの消息が知りたかった。
担当の相談員の方は気さくで話がしやすかった。
緊張や恥ずかしさはあったものの、アイツとの想い出話は楽しかった。
そして、捜索をお願いすることにした。
9月16日のことだ。
そして今日を迎える。
夕食を済ませた私は、いつの間にか眠っていた。
2時間くらいだろうか。
目を覚まし、スマホに1通のメールが来ていることに気付いた。
知らない電話番号。
どうせ迷惑メールだろうと少し寝ぼけた眼で見てみれば、メールの宛先は...アイツだった。
苗字の後ろには”(旧姓)”とあった。
結婚していても不思議ではないが、喪失感のような感情と共に連絡をくれたという嬉しい気持ちで胸がいっぱいになった。
想い出がどんどん蘇ってくる。
私にとっては忘れられない大切な想い人だったが、アイツは私のことを憶えていてくれていたのだろうか?
そんなことを考えながら、今も元気にしていることが分かっただけで、安心した。
これからは友人として、繋がっていけるのであれば、私はそれだけで幸せだろう。
第02話 アイツからの連絡から一夜明けて!
依頼して良かった。
30年以上前に、離れ離れとなったアイツを探し出してくれた「さくら幸子探偵事務所」
閲覧ありがとうございました。
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中年独身男のお役立ち情報局
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