【if】~もう少しだけアイツと一緒にいられたら~ 第7話
母親に怒られながら目を覚ました朝。
時計を見て、飛び起きた。
もう登校時間だ。
アイツの言う通り、遅刻しそうだった。
急いで学生服に着替え、家を出た。
桜も散ってしまい、暑くなってきた5月。
朝はまだ涼しく、私は走って登校した。
アイツのアパートの前を通り、長い下り坂を駆け下り、国道2号線沿いの通学路に出た。
小学生が歩いて登校している横をすり抜け、走り続けた。
糸崎駅前まで来ると、中学生の登校姿が見え始めて、俺は少しホッとした。
クラスメイトに会い、一緒に登校することになった。
「勉強しとるん?」
そう言われて、昨日アイツと図書館で勉強したことを思いながら、
「全然しとらんよ。」
と、呼吸を乱しながら答える。
校門を通り、下駄箱で上履きに履き替えて、教室に向かう。
遅刻ギリギリで教室に入る私。
「緒川っち、おはようぉ。」
「オッス!」
体育会系のノリであいさつする俺。
自分の席に着いた俺は、カバンから教科書とノート、筆記用具を出し、机の中に入れた。
朝の会まで、あと5分のことだ。
「緒川、遅刻せんかったね。」
声を掛けてきたのは、アイツだった。
日直の登板だったアイツは、急いで教室に入ってきた俺を見ていたようだ。
「おぅ、余裕じゃよ。」
「どこが?ギリギリじゃよ。走ってきたんじゃろ?」
「何で分かったん?」
「汗かいとるもん。」
アイツとふたりきりでの勉強に、テンションが上がった俺。
昨晩は、興奮して寝つきが悪かった。
アイツは、今日もかわいい。
そう思っているところに、担任の先生が教室に入ってきて、アイツも自分の席に着いた。
朝の会をあくびをしながら聞き流し、アイツの方をチラリと見ながら、ふと思った。
アイツと教室で会話をするのは、あまりないことだった。
それが、アイツの方から寄ってきて、声を掛けてきた。
アイツとの距離が縮まったのかと、嬉しくなった。
朝の会も終わり、1時限の授業が始まる。
机から教科書を出し、パラパラとページをめくっていると、落書きされていることに気付いた。
『授業中に寝るなよ!』
見覚えのある字だ。
それもそのはず。
アイツの字だからだ。
昨日、一緒に勉強しているときに、アイツがした悪戯だった。
アイツの席の方を見ると、アイツは俺の方を見て、笑っている。
目が合って、ハッとした後、しかめっ面を見せて返した。
そんな姿や、アイツと私の距離感に、クラスメイトも気付き始めた。
授業が終わり、休憩時間になると、
「緒川って最近、友野と仲いいじゃん。」
「ぶち怪しいじゃろぉー。」
「えー、ホンマなん?」
クラスメイトから、茶化されるようになった。
「ホンマなんもないんよ。」
と言い返してみてはみたものの、さらに盛り上がるクラスメイト達。
何もなくはないのだが、恋人同士というわけではない。
陸上部で、アイツと仲の良い川中さんも入ってきた。
「部活でも仲いいんよ。一緒に走っとるけぇね。」
「アイツも俺も短距離やっとるけぇーよ。」
長距離の川中さんは気付いている。
俺がアイツを好きなことを。
「この前、一緒に帰ってたじゃろぉー。」
見られていたことに焦りながら、
「帰り道が同じなだけじゃよ。」
苦し紛れな言い訳で、休憩時間が終わる。
授業をぼぉーと聞き流しながら、今日の帰りのことを考えていた。
アイツを誘って、一緒に下校するわけにはいかず...。
それに、日直の登板のアイツとは時間が合わず、自然に一緒になるのは難しい。
中間テストが終わって、部活が再開するまでは、ひとりで下校かな。
そんなことを思いながら、下校時間となった。
アイツは日直で残らなければいけない状況を横目で見ながら、教室を出た。
「(このまま帰ってもつまらないな)」
家に帰っても勉強しろと言われ、ゲームもさせてもらえない。
下駄箱に向かいながら、どうしようかと考えている時、朝の会での担任の話を思い出した。
最近は三国志がブームだったこともあり、学校の図書館に「横山光輝三国志」が入った。
ゲームと同じくらい歴史の好きだった俺は、三国志も好きだった。
下駄箱に行くのをやめ、夕方の図書館に向かう。
勉強するフリをして、三国志のマンガを読みに行くことにした俺。
図書館で待っている出来事とは?
それは次回で。
第8話
閲覧ありがとうございました。
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